差別していいことはない

世の中にはいろんなひとがいます。世界の人口は現在約75億人。それだけたくさんのひとがいれば、見た目や価値観が何もかも同じ、というひとは早々いません。

と、いうことはたいていのひとが理解しているかと思います。ニンジンが好きなひともいれば嫌いなひともいる。そんなことは誰でもわかっていて、それでいじめられたりすることはふつうありません。

けれど、それをわかっていながらにしてどうしても解決できない「違いの問題」はいくつもあります。そのひとつが「性」の問題。LGBTをはじめとする性的マイノリティと呼ばれる人々に対する差別的な見方は、最近になって少しは寛容になってきているように思います。それでもまだ、性的マイノリティと呼ばれる人々が矢面に挙げられ、差別的な視線にさらされることは少なくありません。

そんな中、英保守党の閣僚で初めて、デービット・マンデル氏がゲイであることを公表しました。マンデル氏は2015年からスコットランドの担当大臣を務め、民間組織とも協力してLGBTに対する学校などでの差別やいじめをなくそうと取り組んでいました。彼によると、英国では政治的信条を問わず、性的少数者を尊重する価値観がおおむね定着したといいます。

また、性的少数者を巡る議論が政治問題化したり、特定の政党の立場と結びついたりするのは、団結した社会を築く上で望ましくないと彼は主張します。非常に論理的で、筋の通った主張です。日本でも芸能人や著名人の同性愛や両性愛が発覚してニュースになるというようなことがありますが、性の価値観が問題になるのは恋人や結婚などかなり限定した範囲での話で、根本話題になったり差別するようなことではないのではないか、と常々思うばかりです。

性的マイノリティと呼ばれる人々に対する差別の問題は、日本でも取り沙汰されますが、欧米では日本以上に問題視されているようにも見えます。キリスト教的な考え方として同性愛の否定があるということが大きいのではないかとも思いますが(イエス・キリストが同性愛を否定したという事実はないと言いますが)、宗教的なバックグラウンドがあったとしても、それを理由に自分と違う人間を下に見て差別したり、迫害したりすることには、社会で生きていく上で良いことは特にないのではないでしょうか。

「違いを認め合い、それぞれの人生の選択を尊重しあうことによってこそ、家族や社会へのさらなる貢献が可能になる」

マンデラ氏の強調したこの言葉こそ、多様な人々が生きる現代の世界において、社会を潤滑に回すための至言のように感じました。

参考記事:
20日付 朝日新聞朝刊(大阪13版) 11面(国際) 「性的少数者「英国は支える」」

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