AIくん、哲学の世界へようこそ

『哲学』。「理性」によって人生・世界、事物の根源の在り方や原理を求めようとする学問であるため、近年発達の著しい人工知能(AI)からは一見すると最も遠くにある学問ですが、やはりAIによって影響を受ける部分、受けない部分が存在するようです。一体どのような部分がAIによって「変わるもの」であり、「変わらない」ものなのでしょうか。

「変わるもの」でまず考えられるのは、AIが過去の哲学者の思考パターンを発見すること。この記事に書かれているように、カントの全集を読み込ませることで思考パターンを発見させ、「人工知能カント君に聞け!」といったアプリがリリースされる・・というようなことはいずれ可能になりそうです。哲学の研究者は「人工知能カント」にいろいろと質問をし、返ってきた答えを分析することが仕事になるだろうと書かれています。

しかし、考えてみるとここで挙げた人工知能の働きは人間が出した問いに対する解を出しているに過ぎません。哲学の根本である「生きるとは何か?」「なぜ私はここに存在するのだろうか?」といった疑問を自ら発し、それについて考えるということは今のAIにはまだできないのではないでしょうか。もちろん「内発的に哲学的な疑問を発する」機能がAIに備わるようになるとまた違った世界が見えてきそうですが、このような世界はまだ当分先であると考えてもよさそうです。

AIによって「変わること」は数多くありそうです。しかし、今のところAIは人間の「助手」に過ぎず、やはり人間が主役として担う部分がまだまだ多くあります。さて、有能な助手がつくことで果たして、私たちはどこまで進化、成長することができるのでしょうか。まさか楽になって退歩するとは思いませんが。今後の研究が気になります。

参考記事

22日付朝日新聞朝刊(京都13版)33面(文化・文芸)「AIは哲学できるか」