エスカレーターを利用する時、できるだけやめた方がいいとわかっていながらもつい先を急いで歩いてしまいます。東京に代表される関東地方の都市部では、左側は立ち止まる人用、右側は歩行者用。関西はこの逆ですね。決してルールではないのですが、暗黙のマナーのようなものとして利用者の間で守られています。左側には長蛇の列ができることが多く、右側で立ち止まっている人の後ろを歩行する人達のイライラする姿は想像に難くありません。
しかし、片側を上り下りに使うのは危険な行為です。一般社団法人日本エレベーター協会によると、エスカレーターの事故の原因の7割近くが転倒でした。歩行が事故につながりやすいと言われています。鉄道会社がポスター作成や注意喚起を行なっているものの、社会に浸透している実感はあまりありません。
そんな中、学生たちが問題の解決に向けて立ち上がりました。歩行者にぶつかられた人が転倒しないようにとの思いから開発された「思わずつかまりたくなるような手すり」。文京大学経営学部でマーケティング戦略を研究する教授、ゼミ生ら6人が考案、デザインし、手すりのラッピング広告などを作るアサイマーキングシステムが作成に協力しました。
今年10月、東京都品川区にある商業施設「アトレ目黒1」に期間限定で設置され、好評だったようです。実際に手すりの利用者も増え、事故防止への希望が見えてきました。
オレンジ色の背景に描かれた紫色の丸の中心には、クリーム色の「ぎゅっ」の文字。つい握りたくなってしまいそうです。文字だけでなく、ネコやウサギ、タヌキなどの動物の顔のイラストも交互に並んだ、可愛らしいデザインにほっこりしました。
人々の中で当たり前となってしまった習慣を変えるには、ちょっとした工夫が必要です。街に溢れるアイデアで事故のない安全で安心な環境が作られるなんて素敵ですね。
参考:
17日付 朝日新聞朝刊(東京13版)29面(教育)「つかまりたくなる手すりに」