ドーピングに手を染める選手がゼロになることを祈って

皆さんはドーピング検査の厳しさをご存じでしょうか。

検査の際の採尿は同性の検査官の前で行われます。また、試合時の検査だけでは不十分であるため合宿や自宅で抜き打ちの検査も行われます。そのため、対象選手は3か月先までの居場所をWADA(世界反ドーピング機構)に通知しなければなりません。

そして、この検査の厳しさは年々増し、毎年更新される禁止薬物リストも増え続けています。それは、検査をかいくぐるための「抜け穴」が次々と開発されているという悲しい現実のためです。

「抜け穴」を使ってでも勝ちたい。そこには勝利への強い執念すら感じます。

しかし、ずるをして勝ち取った勝利から本当の喜びは得られるのでしょうか。勝利への執念には正当な努力をもってこたえるべきではないでしょうか。

IOCはソチ冬季五輪でのロシアの組織的不正を認定し、来年の韓国・平昌冬季五輪へのロシア選手団の参加を禁じることを決めました。不正が問題視されながらも参加を容認したリオデジャネイロ五輪からは大きな方針転換となります。

組織的なドーピングを行うようになった背景に目を向けると、大国主義を求心力とする体制のゆがみが見えます。実際にソチ五輪ではその成果で国民を熱狂させ、政権への支持率を上昇させることに成功しています。

しかし、本来スポーツは政治の道具ではないはずです。そして、五輪は国威発揮の場でもありません。

「一番大事なのは自分自身の肉体を持って勝負すること。ここにスポーツの面白さがある。」

元ハンマー投げ選手室伏広治氏の言葉です。彼は2大会連続で上位選手のドーピング違反によりメダルを獲得しました。

  この言葉はスポーツに携わるすべての人が目指すべき姿を表しているように思えてなりません。

 【参考記事】

7日付 読売新聞朝刊(大阪14版)1面「露のドーピング 組織的」

同日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)9面(国際)「政権の大国誇示 根底に」

同日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)19面(スポーツ)「IOC ロシアに配慮も」