ネット通販最大手のアマゾンが「現実世界」で拡大し続けています。朝日新聞では、「コミュニティ」「投資」「情報」この三つの視点を持つそれぞれの知識人たちが「ネットとリアルの融合」について論じています。
「PPAP」で昨年一世を風靡した古坂大魔王さん。ブレークする前は、ピン芸人の日本一を競うR-1グランプリに出場したいと考えていたといいます。しかし当時、露出が少なく、テレビなどでネタを披露する機会がありません。だから現在のネット環境に合わせた動画をアップしたところ、女子高生を中心に話題となり、最後には海外の有名人にも取り上げられるネタに。そんな彼だからこそ、日常生活のように「向こう側にいる相手を思ってネットに接することが大切だ」という結論を導き出していました。
航空会社スカイマーク会長や一橋大学大学院教授を務める佐山展生さんは、アマゾンが実店舗を保有する企業を買収する動きを見せていることについて、「現場の空気感」を求めての行動と分析しています。「分野で独占的な地位を築いた企業は次の市場を探す」という理論を前提に、ネット通販を席捲したアマゾンは実際に取引するお客さんを生で感じたくなったのではないのかというのです。
ネットが私たちの生活の利便性を格段に進化させ、「つながり」の可能性を広げました。ビジネスのツールとして利用したアマゾンや土台となるプラットフォームを作っているグーグル。それらの企業は私たち一人一人をデータ化し次の可能性を探り続けています。
そんなネット社会だからこそ危険性も内包しているとジャーナリストの森健さんは指摘します。データ化し個人のニーズに合わせて情報が提供される「パーソナル化」が進むにつれ情報自体を集める力が低下してしまうというのです。外に出かけるという行為をしなくてもネットだけで完結することができる。そうしたことが新しい情報に出会う機会をなくしてしまうとのことです。
私自身も日々感じることがあります。書店に出かける機会は格段と減ったうえ、グーグルで何万件の検索結果を得ても、実際に見るのは上から十件程度といったことです。ネットもリアルも互いの延長線上にあるからこそ、片方に依存せず、上手く使いこなす「工夫」が求められているのかもしれません。
参考記事:
21日付 朝日新聞朝刊(第12版)15面(オピニオン)「ネットとリアルの融合」