「死にたい」その声を受け止められる社会に

神奈川県座間市のアパートで切断遺体が見つかった事件。警視庁は、DNA鑑定などで既に判明している1人を含め9人全員の身元を特定したと発表しました。各紙は、被害にあわれた方々がどんな人だったのか、実名と写真付きで報じています。それぞれの生き方を読みながら、悲しく痛ましい事件だとあらためて思いました。

白石容疑者は、人生に悲観的な投稿をしている女性たちに「一緒に死にましょう」などとメッセージを送って近づき、家に招き入れていたといいます。記事によると、白石容疑者は「会ってみたら『話を聞いて欲しい』『寂しかった』と言っていた。本当に死のうと考えている人はいなかった」と語っているそうです。「命を絶ちたい」とつらい思いを抱え、追い込まれていた人に支援の手ではなく、悪魔の手が伸びてしまったのです。

「#自殺願望」と入力すればたくさんの書き込みをみることができます。どうして、わざわざSNSで「死にたい」と心の中をさらし出したのでしょうか。いまの社会では、「死にたい」との声を受け止められる環境をまだまだつくれていないからだと思います。

中高生の集まる児童館のトイレには性や妊娠、自殺に関する相談窓口の電話番号やホームページが記された名刺サイズの小さな案内が置いてあることがあります。もちろん大切な取り組みの一つです。ですが、困ったときには電話よりメールでやり取りしたいですし、その年代であればLINE(ライン)やツイッターのほうが使いやすいです。「遠くの親戚より近くの他人」ということわざがありますが、今は「画面の誰か」のほうが頼りになるのかもしれません。

「死にたい」と投稿することが決して悪いことだとは思いません。どんな発信の仕方であれ、助けを求めるのは一番大切なことです。支援のあり方も若者の暮らしに合わせて変えていくとともに、生きることが苦しくなるような思いの若者を標的にする犯罪者を監視していくべきでしょう。

二度とこのような事件が起こりませんように。そう強く祈ります。

参考記事:
10日付 朝日新聞(東京14版)1面「座間の事件、全員身元判明 15~26歳の9人 DNA型で特定」 関連記事39面
同日付 日本経済新聞(東京14版)39面「9人全員の身元特定 座間遺体、15~26歳の男女 DNA型などで 」
同日付 読売新聞(東京14版)1面「9人全員身元特定 座間遺体DNA一致」関連記事37面