教育格差のループを断ち切ろう

「4年制大学への進学率は両親の年収と比例する」。10年ほど前の東京大学の調査でこんな関連性が明らかになりました。確かに、私の周囲を見回しても、大学生は比較的恵まれた環境で育った人が多いと感じます。 

親の収入が子供の進学に影響するという話はどうやら世界共通の課題のようです。朝日新聞の記事によると、「経済格差による進学の壁が一般的には低いとされるフランスでさえも親の仕事や年収によって子供の進学が左右される」とありました。

こうした現状に対して危機感を呈したパリ政治学院のフレディリック・ミオン学長の興味深い言葉があります。「エリートは社会全体を代表しなければならない。外交官の子供が外交官に、官僚の子弟が官僚にと言う再生産ばかりでは、国民の共同体を支える使命を達成できない。そう。同じような価値観を持つ人間だけで世界を動かしていくというのは大きなリスクを孕んでいるのです。

もちろん、この危うさに誰も気づいていないわけではありません。というのも、格差が拡大している一方で、色々なところで「ダイバーシティ」が叫ばれているからです。しかし、まだまだ多くの課題が立ちはだかっています。自身の力ではどうにもならない壁を一つずつでも突き崩していくことがいかに難しいものであるかを表しています。

しかし、解決策のヒントはすぐ近くにあるとも思います。この記事には貧困や失業、移民などの社会的な課題を抱える地域の高校と提携し、優秀な生徒を受け入れる「優先教育協定」という制度をもつパリ政治学院や、全国の施設にいるこどもの進学率が24%となっているなか、在籍者の7割が高校卒業後に大学などへ進学した児童養護施設「二葉むさしが丘学園」の取り組みが取り上げられています。

こうした挑戦はまだまだ試行錯誤の段階であり、完全なものであるとは言えません。しかし、さまざまな取り組みを知り、より格差をなくしていくのはどうすればいいかを考えることが大事だと思います。私自身が自分の頑張りだけで大学進学できたという恵まれた環境にいた事実に感謝しつつ、こうした問題に関心を払って、どうすれば解決するのかを考えていきたいと思います。

 

参考記事

22日付 朝日新聞(京都第14版)1面(総合1)「「負け組」教育が格差拡大」

同日付 朝日新聞(京都第13版)2面(総合2)「格差再生産 止まるか」