若者のクルマへの興味の起爆剤になるか

近年、若者のクルマ離れが指摘されています。大学の友人でも免許を取得していない人の方が多く、就職活動のためにわざわざ免許を取る人が少なくありません。クルマを買いたいと考えている学生などほとんどいません。

そんな中、トヨタ自動車は19日、スポーツカータイプの新ブランド「GR」の新戦略を発表しました。既存の「ヴィッツ」や「ハリアー」、「プリウスPHV」などでGRシリーズを販売します。「GR」は世界ラリー選手権などに参戦するトヨタのモータースポーツチーム「GAZOO Racing(ガズーレーシング)」の頭文字から来ています。2010年から展開してきた「G‘s(ジーズ)」というスポーツカーブランドを刷新したものです。

こうしたブランド展開は、自動車業界全体に広がっています。日産自動車では「nismo(ニスモ)」、スバルは「STI」ブランドでスポーツカーを販売しています。その背景には、やはり若者がクルマに興味を示さなくなったという国内の逆風があります。その傾向は特に男性に顕著で、総務省の全国消費実態調査によると、30歳未満の単身労働者1000世帯当たりの自動車保有台数は、1999年に600台を超えていたのをピークに減少を続け、2014年には400台程度にまで落ち込んでいます。

現状を打破するために、各社はモータースポーツで培われた技術を生かして足回りを強化し、走行性能を高めた車種を増やそうと躍起です。クルマの魅力を高めて販売をてこ入れする方針です。

今回の「GR」のラインナップを見て、そのスタイリッシュなカッコよさに筆者は興奮していますが、残念ながら趣味の合う仲間は皆無です。若くて時間があるときだからこそ、友人とクルマで旅に出ることもできます。万人受けするようなスタンダードなクルマも確かに必要です。その一方で、エンジンをかけるときの始動音やハンドリング、アクセルワークに心を踊らせるような魅力的な製品を、自動車業界全体で追求し続けてほしいものです。

参考記事:

20日付 読売新聞朝刊14版 8面(経済)「トヨタ「走り」の新ブランド」