といっても、講談社(東京都文京区)の棚のみです。文庫コーナーといえば、背を向けた状態の本がいくつも並んでいるのが一般的です。収納冊数を意識した結果、どこの出版社の棚もそのような陳列に落ち着いたそうです。この常識を講談社は来月、全国約2000以上の書店で覆します。
まず、表紙を前面に向ける陳列(面陳)へとシフトします。基本的に面陳されるのは、辻村深月や宮部みゆきら著名作家10名のみです。次に、作品の面白さをアピールするためPOP広告を活用し、代表作の「次の一冊」へと読者を誘導する工夫を凝らします。
このような売り場変更に至った背景には、講談社と取次大手の日本出版販売(日販、東京都千代田区)の狙いがあります。
講談社文庫は、映像化された作品ばかりがヒットする傾向にあるそうです。講談社書籍販売部の島田重輝次長は「映像化された一部の人気作に依存するのは歓迎すべき状況ではない。なんとか他の作品も底上げしたい」と話します。
同様に日販・書籍仕入第一課の奥田直樹さんは「ランキング上位の本は変わらず売れているのに市場全体が落ち込むのは、それ以外が売れなくなったから」「(中略)既刊が中心の棚にはPOPも少なく、フラリと来た人への訴求が足りなかったのでは」と指摘します。
書籍の販売金額は減少傾向にあり、8年連続のマイナス成長(前年同期比)が濃厚となっています。若い人たちの活字離れも深刻な中、出版業界全体の活性化が急務となっています。あなたの街のあの本屋さんでも、意外な工夫がされているかもしれませんね。
【参考記事】
27日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)文化面「本離れ、店頭から立て直し」