宇宙ビジネス 秘める可能性

 衛星から粒状の素材を放出して人工の流れ星を作り出す。画像データを災害の対策や農地の管理のために有償で販売する。一口に宇宙ビジネスといっても、なかなか想像がつきませんが、実は様々な用途が開発されつつあります。いま、この分野に民間企業が参入する動きが相次いでいます。

今日の紙面には、ロケットベンチャー企業(VB)のインターステラテクノロジズ(北海道大樹町)の挑戦が紹介されています。国内初の民間単独開発ロケットと注目され、7月30日に打ち上げられた「MOMO(モモ)」は、宇宙空間への到達に失敗しました。しかし創業者の一人である堀江貴文氏は「3か月程度あとになると思うが、より安くメンテナンス性の高いモモの後継機を開発する」と語り、すでに未来を見据えています。民間企業が手掛けることで、打ち上げ時期や投入する軌道を自由に選べたり、コストが安かったりするといったメリットがあげられます。

 

宇宙ビジネス参入の動きは、これにとどまりません。キヤノン電子、IHIインターエアスペース、清水建設、日本政策投資銀行の異業種4社が出資して、ロケット打ち上げビジネスに参入することも発表されました。「新世代小型ロケット開発企画」を9日に設立し、事業化を目指します。地球観測や通信につかう小型衛星の需要の高まりを受け、低コストの小型ロケットで新市場を開拓するのが狙いです。 

 

大学の授業で、宇宙法について学びました。近年、国内で宇宙ビジネス競争が激化している背景には、昨年11月に成立した「宇宙二法」の影響があります。宇宙活動は、国としての威信を表すほど国益に深くかかわっているうえ、世界的なリスクを生じる可能性もあります。そこで、衛星運用の許可制度の導入や賠償責任保険の強制加入、観測データにおけるプライバシー保護などに関するルールを定め、安全保障上の利益の確保と民間事業の推進を可能にしました。

 

まだまだ欧米勢やロシアに後れを取っている日本ですが、自由な発想や高度な技術を有する様々な民間企業が参入することで、宇宙開発の新たな道筋が描かれるのではないかと感じます。また宇宙産業という点においても、異業種の企業が連携することで多様な関連ビジネスが実現され、大きな可能性を秘めた市場が生まれることでしょう。さらなる発展に向け、法整備や資金面など多方面からの国のサポートにも期待したいです。

 

 

参考記事 日本経済新聞 朝刊 13版 総合5面「宇宙ビジネス担う VBの挑戦」

                        夕刊 3版 1面 「小型衛星打ち上げ参入」