日本人のありのまま 東京五輪、選ばれた理由

 来る2020年の東京オリンピック、パラリンピック。三年後、皆さんは何歳で、どこで何をしているのでしょう。本日付の朝日新聞朝刊、この大会について、意外な人物の取材記事が掲載されていました。

 大人気バンド、元東京事変の椎名林檎さん。多くの大ヒット曲を持ち、バンド解散後も歌手活動に加え、ドラマや舞台への楽曲提供を精力的に続けてきた大スターです。実は椎名さんは、リオ大会閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニー(大会旗をリオから東京に受け渡す式典)で演出・音楽監督を担当していました。

 椎名さんは、三年後の東京五輪について「忍法のような日本の技を見せたい」と語ります。

 海外の方にとっての、日本のイメージとは何でしょうか。アニメ、カワイイ、シンジュク、サムライ、でしょうか? 
 今や日本は観光大国と名乗るにふさわしい国です。その中で、外国人観光客のイメージにとらわれた演出が目立ちます。どこへ行ってもニンジャ、サムライ、花魁道中。東京のほかに江戸という場所がある、と勘違いをしている外国人観光客もいるそうです。これが、東京五輪に向けて、日本が諸外国に見せなければいけない姿でしょうか?

「わざわざ媚びに行って振られる」のは色恋沙汰然り、一番みっともないでしょ。

 椎名さんの厳しい一言です。「こうしておけば外国人は喜ぶだろう」という発想ではいけません。本当に見せるべきは、外見だけ装ったキャラクターではなく、中身。時間通りで待たせることのない交通ダイヤ、丁寧な接客ぶりから伝わってくるおもてなしの心。椎名さんの言う「忍法のような日本の技」とは、こういうことなのだそう。

 今回、日本が五輪の会場に選ばれた理由。その一つの中に「東日本大震災からの復興」というものは確かにあります。五輪招致を通じて経済的な修復を、という各国からの応援メッセージでもあるでしょう。大打撃を受けた国だからこそ、日本は誇りを持って最大級のおもてなしを。一人のカリスマに頼るスタイルは日本の和には似合わない、全員が実行委員のつもりで、海外の方を全力でお迎えしましょう、と椎名さんは強く語ります。

 これほどのカリスマに、「日本の和にカリスマは似合わない」と言われてしまうのは悔しいばかりです。きっと、「カリスマをなくせ」といっているのではないのでしょう。「全員がカリスマに」。これが今の日本に求められるスタイルです。媚びずに、ありのままを。三年後のわたしたちが、どんな気持ちで何をしているのかが問われます。

 一人一人にしかできないことを組み合わせてこそ、東京でしかできないオリンピック、パラリンピックになります。

参考記事:

24日付 朝日新聞朝刊 第10版 19面(スポーツ) 「媚びずに ありのままを」