TオアF。その見極めの力を。

 「東日本に放射能が拡散しています!関東地方もとても危険です。このメールを出来るだけ多くの人に回してください!」

 中学1年生の3月、東日本大震災が発生しました。当時埼玉県に住んでいた私の記憶に深く残っているのは、多くの地域で停電が起き、幹線道路が大渋滞した光景です。大半の電車が終日にわたって運行を止め、電車通学のため、学校で1晩を明かしました。日本中の人が不安に陥っていたとき、冒頭のメールが携帯電話に届きました。送り主を見ると学校の友人。その友人も友達から届いたので不安になって回したとのことでした。

 もちろん、メールの内容のような危険な事実はありませんでした。しかし、大災害の際にはそのような「デマ」が容易に拡散してしまいます。実際、昨年の熊本地震の際、ライオンが動物園から脱走したというウソの情報が画像とともにSNS上で拡散されました。瞬く間にその情報は広がり、元の情報を流した男は逮捕されました。この他にも鹿児島県の川内原発で火災が発生したというデマも流れ、警察の緊急対応に支障があったということです。

 SNS上では情報があっという間に多くの人に伝わり、それが原因で時には炎上してしまうこともあります。もちろん、伝達の速さが功を奏し、東日本大震災の際には津波で孤立した建物の上に残された人の情報がSNSで伝えられ、それを見た消防が駆け付けたこともあります。

 災害に関する情報を送る人の多くは、善意で情報を共有しようとしたのでしょう。しかし、「この情報が、困っている多くの人に伝わって助かってほしい」。その善意のせいでデマが大きく広がり、結局は混乱を招いてしまう、こんな悲しいことはありません。

 SNSの利点が「諸刃の剣」であることを十分理解し、情報の共有をする前に、今一歩踏みとどまって一呼吸置く。そんな心構えが重要です。そのためにも日頃から情報の吟味の力を身につける必要があります。

参考記事:

24日付 朝日新聞朝刊(14版)31面(社会) 「デマ拡散 被災地の教訓」