顔にはモザイク処理が施され、無機質な字幕が流れる映像から彼女の心中を察することが、わたしにはできませんでした。遠く離れたベトナムで撮られたインタビューです。
千葉県我孫子市で3月、小学3年生ベトナム人の女の子、レェ・ティ・ニャット・リンさんが殺害、遺棄された事件を知らないひとはいないでしょう。24日修了式の日、登校したきり行方をくらませた彼女は、26日朝、遺体となって発見されました。死因は窒息死だと報じられています。小学3年生の女の子を誰かが手にかけたのです。千葉県警は今月14日、容疑者としてリンさんが通っていた小学校の保護者会長を容疑者として逮捕しました。容疑者とされている40代男性は、近隣の人びとや、保護者会員からの信頼も厚かったそうです。責任感が強く、学校を良くしたいと考え、少年補導員までも委託されているほどでした。
彼が逮捕されたその日、リンさんの故郷ベトナムで母親が取材に応じました。「子供のいとおしさがわからない人の犯行だと思っていた 」「誰を信用していいのかわからない」。ニュース番組でも彼女のインタビュー映像が連日流れています。どのニュースを見ても、モザイクがかけられた顔や、異国の言葉を訳した無機質なテロップから、なにかもを読み取ることはわたしにはできません。けれど、一つ一つのインタビューを忘れることもできませんでした。彼女はあのとき、泣いていたのでしょうか。
登下校中の子どもを狙った犯罪は後を絶ちません。保護者や先生による見守りが増える一方で、登下校班に車が突っ込むなどの大事故を恐れて、集団登下校の実施率は減少傾向にあると言います。子どもが一人でいる時間を、どう大人がカバーしてあげるかが課題となっています。地域の目が重要だと多くのひとが言います。わたしもそう思っていました。でもそれでは、自分達の大切なものを奪うものが地域にいることを、考えきれていないのではないでしょうか。
今日大学へ行く時すれ違ったランドセルの女の子が、無事に「ただいま」を言えたことを祈ります。
参考記事:
15日付 読売新聞朝刊(京都13版) 1面 「容疑者の車 防犯カメラに」