がん精密検査 自分の健康を守るために

 「もっと早く詳しい検査を受けてたらと思うと、悔しい」。

 今年の1月に39歳の若さで亡くなった高校時代の担任教師が、お見舞いの時に呟いた言葉です。抗がん剤治療ですっかり痩せてしまった先生が浮かべていた、やりきれない表情が今でも忘れられません。体の不調を感じ何度か診察は受けましたが、仕事が多忙な時期とも重なり精密検査を受けるのが遅れたといいます。胃がんが見つかった時には既に病状が進行し、余命1年の宣告を受けました。妻と4人の子どもを遺してそう簡単に諦めるわけにはいかないと闘病を続けていましたが、病は確実に先生の体を蝕んでいきました。

 記事によると、2014年度に全国の市町村が実施したがん検診で「精密検査が必要」と判定され、その後実際に検査を受けた人の割合は、大腸がんが67%、子宮頸がんが72%、胃がんで80%にとどまったそうです。これを受け、政府は精密検査の受診率を90%に上げる目標を定め、今夏にまとめる次期がん対策推進基本計画に盛り込む予定です。

 日本の3人に1人の命を奪っているのが、がんです。最も死亡率の高い病気ではありますが、けっして不治の病ではありません。検診を受け、生活習慣を見直すことなどで予防に努めることの重要性も取り上げられています。早期発見が可能ながんについては、早い段階で治療に取り掛かることで、死亡率や治療の負担を抑えることができるのです。

 現在、検診の対象者は、子宮頸がん検診の20歳以上を除けば40歳~50歳以上とされています。若いうちに検診を受けることの有効性はまだ明らかにされておらず、進行しない性質のがんを見つける「過剰診断」を招いたり、無用な心理的負担を増やしたりするという批判があります。ただ、年齢を問わず発症するがんや遺伝性のがんと闘う若年性がん患者が増えている現状を踏まえると、若いからといって自分とは無関係な病だと決めつけてしまうのも早計な気がします。

 いきいきと毎日を過ごすためにも「身体が資本」といつも自分に言い聞かせています。基本的なことではありますが、自分の身体の状態のチェックを怠らずよく把握し、気になるときはすみやかに医療機関にかかることで健康を保ちたいものです。

 

参考記事:
13日付 読売新聞 12版 33面「がん精密検査9割目標」