昨日は新学期最初の講義でした。経済学の歴史に関する授業で、教授が「19世紀はイギリスの時代。20世紀はアメリカの時代。では21世紀は?実は今のところリーダーがいないのだ」と話していました。その授業中に、アメリカがシリア軍基地にミサイル攻撃したとのニュースが世界を駆け巡りました。
数日前、シリア国内の内戦で化学兵器が使われた形跡があり、欧米諸国はシリア政府が使用したと非難していました。アサド政権の退陣は最優先課題ではないと主張してきた米国のトランプ大統領も、化学兵器の使用を強く非難し、何かしらの政策転換が行われるのではないかと憶測が飛んでいました。
アメリカのシリア軍基地攻撃の一報に、日本でも衝撃が走りました。投資家がリスク回避の動きを強め、金融市場では円高・株安が進み、金の先物価格は上昇しました。日本政府は国家安全保障会議(NSC)を開催し、安倍総理は「アメリカ政府の決意を支持する」と表明しました。
このシリア攻撃のさなか、トランプ大統領は中国の習近平国家主席と初の米中首脳会談に臨んでいました。シリア内戦について、中国はこれまで政治的な解決を主張してきており、軍事介入の気配を見せていた米国に自制を求めていました。首脳会談の間に米軍はミサイル攻撃に踏み切ったのですから、習主席のメンツがつぶされたとの見方もあります。
この措置は北朝鮮にも強いインパクトを与えました。オバマ前政権とは異なり「今のアメリカは、やるときはやる」とのトランプ政権の強硬姿勢をアピールした形です。これ以上のミサイルや核兵器の開発を強行するのなら、米国が強く出るとの見方が高まっており、北朝鮮は危機感を強めています。また、北朝鮮への制裁強化に消極的な中国へもトランプ政権は新たな圧力をかけた格好です。このようにシリアと北朝鮮は今回の強攻策で密接に絡み合った国際問題となりました。
しかし、シリアと違って北朝鮮には残念ながら核があるのです。万が一北朝鮮に軍事行動をとった場合、北朝鮮はアメリカにとどまらず、同盟国の日本や韓国にも反撃に出る可能性は否定できません。その韓国では政情不安が高まっており、次期大統領の有力候補は反日・親北と懸念する声もあります。危機感にあおられた北朝鮮の暴走が心配です。
事態のエスカレートを防ぐためにも、日米韓は北朝鮮への対応で結束して対応する必要がありますし、中国にはより一層圧力を強めていくべきでしょう。しかし同時に、核の暴発を防ぐためにも戦争は避けなければなりません。その意味では日米韓が中国やロシアと協調する重要性は一段と高まっています。きわめて難しいかじ取りを、トランプ大統領や安倍首相ら関係国のリーダーは求められています。
参考記事:
8日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)4面(総合3) 「正恩氏、対米威嚇強める 強硬策に反発と危機感」