「保育園落ちた」の声は、なくせるか

  先日、兵庫県から東京へ引っ越しました。都内の「地域面」にはどのような記事があるのだろう。朝日新聞の紙面を見ると、「保育所入れず 自治体に窮状訴え」という見出しが目に飛び込んできました。「きょうだい4年連続不承諾。市から働くなと言われているような気持ちになる」「不承諾の通知を前に、目の前が真っ暗になった。行き先が決まらず、眠れない夜を過ごした」。子育て中の10人の親たちが武蔵野市役所を訪れ、子ども育成課の職員に訴えました。待機児童はもはや社会問題。首都圏での育児は、より課題が多そうです。

  そんな中、厚生労働省は昨日、保育所に入れない待機児童数の定義について見直し案をまとめました。これまで「隠れ待機児童」とされたうち、親に復職の意思がある場合は、育児休業中も待機児童に含めることが決まりました。それ以外は原則として対象外になります。市区町村に通知し、来年度の待機児童数調査からの適用を順次促します。定義の見直しを背景に、待機児童数が今後さらに増える可能性もあります。

  なぜ、今ごろになって定義を見直したのでしょうか。認可施設に入れないのに、待機児童に含まれないケースが続出し、実情に合わないと批判を受けたためです。こうした子どもは、約6万7000人に上ります。隠れ待機児童は①保護者が育休中②求職活動を休止③特定の施設のみを希望④自治体が独自で財政支援する施設に入所――という4項目に 当てはまるケースを指し、それが7万人近くもいるというわけです。現在は、約6割の自治体が育休中のケースを集計から除いています。「育休中」との理由だけでも、昨年4月時点で7000人以上が待機児童数から外れていました。

  冒頭の子育て中の女性たちの訴えにとどまらず、預けられた人も落ち着いて仕事に打ち込める環境になるとは限りません。会社員の石倉眞紀さん(41)は0歳の三女が認可に入れず、15園ほど回った中で唯一入れた認可園に通うことになります。3歳の次女が通う施設と離れており、送るのに自転車と電車で片道45分かかるため時短勤務にせざるを得なくなったといいます。「ずっとフルタイムで働いてきたので残念。来年に再挑戦するために、仕事しながら保活するのもつらい」と話しています。

  当事者の声と、行政の対応を比較すると切迫感に差があり過ぎるように思います。定義の見直しも必要です。しかし、「どうしたら待機児童はなくせるか」を第一に、問題解決へと取り組んでほしいものです。また、子育てをする家庭の経済状況もさまざまだと思います。子どもを生んでも「働きたい」、「働かなければならない」。働く理由はそれぞれですが、経済支援という策もあるのではないでしょうか。

  筆者も将来、東京で子育てをするかもしれません。都心の「保育の現場」に今後も注目していきたいものです。

参考記事:

31日付 朝日新聞朝刊(東京14版)3面(総合)「待機児童新定義 育休中にも拡大」,29面(地域)「どうする保育 保育所入れず 自治体に窮状訴え 不服申し立て相次ぐ」

同日付 日本経済新聞朝刊(東京13版)5面(経済)「親が育休中でも『待機児童』に」

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