民泊の更なる普及、目前に?

  先日、初めてAirbnb(エアビーアンドビー)を利用しました。「ご飯を作って、映画を観ながらゆっくりしたい」。キッチンも利用できる物件を探しました。いざ、借りた部屋を見ると、「まぁ、こんなものか」。部屋やインテリアはおしゃれでしたが、建物は築年数が古そうでリノベーションをした様子。1泊する分にはさほど気になりませんでしたが、水漏れしている箇所もあり「もう住めなくなった物件を民泊で貸している」というのが第一印象でした。とはいえ「料理をして楽しく過ごす」という普通のホテルではできない経験ができたので、「民泊も悪くはないな」といったところです。

  訪日客の増加でホテル不足が深刻になり注目が集まっている「民泊」。そのルールを定める「民泊新法」案の概要が固まりました。家主を届け出制にして営業の上限を年180日とし、違反した場合の罰則も設けます。民泊はすでに国家戦略特区などで特別に認められてはいますが、多くが現状では違法状態です。政府はルールを明確にしたうえで追認し、さらなる普及を目指しています。

  民間企業の参入も注目されます。京王電鉄は今日、民泊向けマンションをオープンさせます。東京のJR蒲田駅から徒歩10分のところで民泊向けの「カリオ カマタ」というデザインマンションを運営します。2DKのメゾネットタイプの客室で、システムキッチンのほか冷蔵庫、洗濯機なども備えています。大田区の特区で民泊を営むことができる認定を受け、鉄道業界では初めての試みです。

  しかし、訪日客のマナーや騒音などのトラブルは増加傾向にあり、許可を得ていない物件で部屋を貸すなど「ヤミ民泊」が横行しているのも事実です。民泊に客を奪われかねないホテル・旅館業界には根強い反発があります。こうした業界は民泊の営業日数の上限を「年30日以下」とするよう主張しており、与党内では「民泊事業者の責任が軽すぎる」との声もあります。

  こうした懸念を受け、米Airbnb社は政府が成立を目指す民泊新法に従う意向を示し、宿泊日数が上限の180日を超えた物件は仲介サイトに表示されないようにする方針です。民泊が宿泊業界や自治体の反発を受けるのは世界共通のようです。日本は欧米に比べると環境整備が遅れています。政府が成立を目指す新法案も、世界に追いつくためには必要なことでしょう。

  筆者が利用して感じたのは、「主な利用者は訪日客である」ということです。実際に借りた部屋には、過去に宿泊した人がお礼や感想を述べたノートがありました。東南アジアや欧米など外国人観光客の声が圧倒的に多く、日本人が書いたものはほとんどありませんでした。「素敵な部屋を貸してくれてありがとう!」、「また日本に来る機会があれば、ぜひ利用したい」など、外国人利用者の満足度が伺えました。海外からのお客様に歓迎されている民泊ですが、安全・衛生面では課題は多く、民泊を広げるには、運営する側が管理をしっかり行うことが必要でしょう。

参考記事:

22日付 朝日新聞朝刊(大阪14版) 9面(経済) 「民泊新法案 営業上限180日 家主は届け出制・違反には罰則」

同日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版) 3面(総合2) 「民泊ルール 民が先手 エアビー仲介サイトに新機能 京王電鉄特区認定マンション」,「新サービス世界に後れ 業界・住民の反発 難題」