日本で働いて暮らす外国人が増えています。2016年には、外国人労働者が初めて100万人を超えました。しかし、以前あらたにすの投稿『「来日をとても後悔している」。労働者への深刻な誤解』でも取り上げたように、過酷な労働環境の問題が浮き彫りとなっています。そんな中、今朝の紙面から素敵な記事を見つけました。
神戸・南京町のそばにたたずむ、レストラン「SARA」。東南アジアの絵画や小物が飾られ、メニューにはタイや台湾など様々な国の定番料理が並びます。働く場を求める在日外国人女性が調理人となって、母国料理を提供する店です。日替わりで、6か国・地域からきた女性8人が働いています。店を立ち上げたのは、黒田尚子さん。大学時代、外国人女性支援のフィールドワークを通じて、言葉や生活習慣の違いが壁になり自信を失う彼女たちの姿を目の当たりにしました。その後彼女たちが作るお手製弁当の美味しさから着想を得て、絶品料理を売りにボランティアでカフェを始めました。
困難も多かったようです。年上で我の強い女性たちとチームを組むことは、決して容易ではありませんでした。記事を読んで興味深く感じたのは、支援する側とされる側という垣根をなくす努力です。コミュニケーションを重ねて、距離を縮め、悩み事を打ち明けてもらえるほどの関係をじっくりと築きました。また卒業後は「もっと店を発展させるなら私自身が成長しなければ」といったんリクルートに就職。仕事を通じ、飲食店のイロハや経営のノウハウを得て、退社後に常設店をオープンしました。今後は経営を外国人に任せ、店舗をさらに拡大する計画を描いています。
本来持っている力をみんなが出し合える。そんな社会になるように
記事に掲載されている黒田さんの言葉が、非常に印象的です。社会は一人では成り立ちません。多くの人がかかわり、助け合うことで可能となることがたくさんあります。食を通してアジアと日本をつなぎ、外国人の各々の強みを生かせる仕事を作りだす。働き手と客の両者の笑顔を作り出す仕組みに感激し、支援を拡大しようとひた走る黒田さんの姿や熱い思いに心打たれました。
日本では、今後も外国人労働者が増加していくでしょう。しかし、安い労働力や労働力不足を埋める手段としか捉えられていない現状も確かに存在しています。そこで「SARA」のような経営の発想が、企業においても役立つのではないかと思いました。それは単純で過酷な労働を外国人に強いるのではなく、外国人ならではの強みや発想力を生かして会社を発展させるというものです。そのためには長期的な人材育成や労働環境の是正に向けた改革が不可欠ですが、同時に外国人へのサポートづくりも充実していくべきです。言葉や文化の違いから、トラブルが発生するのは当然です。企業や地域の中で、言語教育や文化交流を後押しし、人と人のつながりを生み出して壁をなくすことが、働きやすい環境づくりと将来の日本産業の発展につながります。
参考記事:日本経済新聞 20日付 13版 23面「新興人図鑑 働き手も客も笑顔に 外国人女性に活躍の場」
朝日新聞デジタル 1月27日付 「外国人労働者、初の百万人超 留学生の増加目立つ」