子どもの目線に立ち、子どもを知る

 昨年12月7、8日、子どもの日常にひそむ危険について話し合う『朝集中会議 子どもの「まさか」を本気で考える』が都内で開かれました。「朝集中」とあるように、開催時間は朝の7時30分から8時55分までの1時間25分。この会議に筆者も参加してきました。

 7時に会場に入ると、すでに多くの人が歓談しています。参加者はおよそ60人。新聞記者や専門家、育児をする父母、保育園の園長など様々な肩書の方が参加していました。1日目はパネルディスカッション、2日目は、自宅・公園・道路の3つのテーマに分かれ、それぞれの状況で起こりうる「まさか」の危険について考えました。

 2日目、私は道路にひそむ危険について話し合うグループに参加しました。私の他には、小学生の子どもを持つ母親や保育園の園長ら常に子どもと関わっている人、子どもが使う遊具を製作する人などがいました。話し合いでは「子どもは自分の興味のあるものに飛びついてしまう」といった子どもの行動特性や、「危険を身をもって感じることで学ぶこともある」「すべての危険を排除しようとすると、遊ぶことも出来なくなる」などの意見が上がりました。

 そのうえで、「車を運転する人が子どもの特性を理解」したうえで、「保護者や学校が子どもに何が危険なのかを教える」ためにどうするのかという具体的な対策を考えました。「免許更新時に特性をしっかりと伝える」や「運転前、カーナビに事故例を映してはどうか」など運転者への教育に対する提案が多かったように感じます。

 そのような中で、私には思いもつかないアイデアが示されました。

「子どもには具体的な動きを教えてあげるべきだ」

 「横断歩道の前で『車に気をつけよう』と言っても、道路には走っている車もあれば、止まっている車ある。前から来る車も、横から来る車もある。どれに気を付ければいいか分からない。だから『首を左右に振って、横から来る車に気をつけよう』などと促せば、左右を確認する」。小学生の登下校を見守る保護者の発言です。

 少しの工夫で子どもの「まさか」が減るのであれば、取り入れていくべきです。そして、決して事故を防ぐためだけの取り組みではありません。子どもたちに空手道の指導をするときに、その工夫を取り入れました。また、子ども目線に立とうと、膝をつき、同じ高さで指導すると、それまでよりも教え子の上達が速くなりました。

 子どもの目線に合わせ、行動特性を知るということは、事故を減らすといった「マイナスをゼロにする」だけではなく、「ゼロをプラスにする」こともできるのだと実感しました。子どものいない世界などありません。家族にいる人もそうでない人も全ての人が子どもの立場を少し考えることで、子どもが生活しやすくなるのではないでしょうか。

参考記事
2月19日 朝日新聞 14版 1面 「交通事故 小1突出」