町全体のため、自己実現の場を必死で作る。全国の自治体がひきこもりの問題に頭を抱える中、秋田県の小さな町に注目が集まっています。読売新聞の特集から、地域のあらゆる課題と関連させる支援を考えます。
ひきこもりの高齢化は、困窮と孤立をもたらす切迫した問題です。1月23日の記事は、大人のひきこもりについての初めての調査を伝えました。40歳以上のひきこもりの平均期間は22年に及び、うち半数以上のケースで、行政や病院の支援も途絶えていました。
そんな中、輝かしい実績を残してきたのが秋田県藤里町です。藤里町では、2010年の支援開始から5年間で、支援対象者113人のうち86人が家から出て自立しました。今では全国から毎週のように視察を受け入れています。
支援の特徴として特に興味深いのは、自尊心を傷つけないよう、「弱者として捉えない」ことでした。ほとんどが、一般の参加者と同じ研修に参加します。そもそも藤里町は、人口3500人、高齢化率45%の小さな町です。町の人々にとって、働き手が増えることは極めて重要です。思うに、似たような状況にある自治体は少なくないはず。全国から視察に訪れる理由が分かった気がします。
厳しい現実はありますが、着実にノウハウが蓄積され、広がっています。86人を自立させた藤里町は、全国へと開き始めました。農家、居酒屋、印刷屋など町内の仕事を体験するコースを設け、幅広い世代の参加者を日本中から受け入れています。ひきこもる大人は、本来必要とされる場所がある。そして支援の大半は、場所と人をつなげる事なのではないか。そう予感させる記事です。
参考記事:
2月7日付 読売新聞朝刊11面『ひきこもり卒業のカギは 先進地 秋田・藤里町に学ぶ』
1月23日付 読売新聞朝刊34面『大人のひきこもり 初調査 40歳以上』