児童虐待の発生件数が昨年度、過去最多の7万3765件となりました。統計を開始した1990年の約66倍です。なぜ虐待は増え続けるのか。そこには兆候をつかみ切れない実態があります。
児童虐待の早期発見に重要な役割を担う小児医療の現場。虐待を受けたと思われる子どもを見つけた場合、児童虐待防止法は児童相談所(児相)への通告や相談を義務付けています。しかし、外傷の有無など複数の検査で虐待の判断をするのには限界も見えてきています。
「横浜市児童虐待防止医療ネットワーク」の調査によると、同市内における2011~13年の期間中、虐待に特徴的な頭蓋内出血の症状があった0~2歳未満の子ども51人の内、児相に通告されたのは11人にとどまっていました。医師が判断に迷うケースが多くあるようです。
調査をまとめた佐藤厚夫医師は「虐待したと自分から言う親はいないので、診断で判断するしかない。だが、医者は治療に専念して背景にある虐待の可能性を見落としがちだ。児童虐待に対応した経験が少ない医師もおり、研修も不十分で通告義務も浸透していない」と、現状における課題を指摘します。
児童虐待を減少させるには、やはり兆候の察知が欠かせません。医師だけでなく、私たちにも児童虐待防止法の義務は課せられています。現状をみつめ、意識の再確認をしませんか。
【参考記事】
5日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)2面「虐待 届かぬ子の叫び」