「ネット記事=悪」ではありません。

  現在、卒業論文の執筆に追われています。論文を書く上では、「先行研究」の調査が必要不可欠です。ネット上でしか情報が見つからない場合、あるいは出典元の媒体を入手することが困難な場合はどうすればよいでしょうか。「ネットの情報でも、出典が信用できるものか否か判断し、引用するかを決める」と、先生に教わりました。こうした「情報に対する考え」は、論文を書くときだけに必要なものではありません。日常生活でも「情報を読み解く」力が大切です。

  まとめ記事などのキュレーションサイトを巡る問題で、ディー・エヌ・エー(DeNA)が昨日記者会見を開き、守安功社長らが謝罪しました。トップの引責辞任については「この問題を納得してもらえる形にするのが使命」と否定し、不適切な内容の記事が原因で健康被害にあった読者や著作権を侵害された権利者からの相談窓口を設置することも発表しました。5日のあらたにすの投稿でも取り上げました。(まとめ記事、間違っていた?) 手軽に手に入るネット情報の光と陰、またDeNAの企業体制を批判しました。

  問題となったまとめサイトのうち、先月29日に休止された医療系サイト「WELQ」の原稿は専門知識の乏しい外部ライターらによって書かれ、誤情報や無断転用があるとの指摘が相次いでいました。ファッション情報をまとめた「MERY」など9サイトも今月7日までに非公開となりました。会見で守安社長は「原稿をチェックする体制がなく、意識も低かった。現場への注意徹底が不十分だった」と話しました。記事の再公開について「(記事の審査など)コンテンツ制作に費用をかけた場合、事業が成り立たないかもしれない」として、一部サイトを廃止する可能性も示唆しています。

  大石泰彦・青山学院大教授(メディア論)は「ネット上の情報を少しだけ書き換え、無断転用を隠そうとまでしているのに、運営者が内容に責任を取らない。ビジネスとしてあまりにもひどい」と厳しく非難しました。

  もちろん、問題を起こした企業体制が悪いと思いますが、今回考えたいのは「ネット=悪」ではないということです。「ネットの情報は信用できない」。そう考える人もいるかもしれませんが、「内容」こそが最も重要であり、その情報が紙媒体であろうがネットであろうが、信用できるかできないかを判断すべきです。「ネットだから」は、理由にならないと思います。例えば大手メディアの新聞、雑誌、NHKなどのテレビも今では「デジタル版」の普及に力を入れています。そうした「情報の出典」を精査し、「この情報は信用できるか」と考えることも必要です。大切なことは、利用者・読者である私たちも「信頼できる情報を得るには、少なからずコストがかかる」という点を改めて認識することではないでしょうか。

  まとめサイトを運営する側は企業としての体制を抜本的に改めてほしい。そう思う一方、「情報との向き合い方・読み解く力」についても、考えさせられました。

参考記事:

8日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)8面(経済)「DeNA、医療サイト閉鎖示唆 記事9割ライターに報酬 社長・会長が謝罪会見」

同日付 日本経済新聞朝刊(大阪13版)13面(企業総合)「DeNA社長『信頼揺らいだ』まとめ記事で謝罪 辞任は否定」

同日付 読売新聞朝刊(大阪14版)33面(社会)「サイト休止DeNA謝罪 誤情報・無断転用『チェック体制なし』」