里親を広げるために 福岡から学ぶ

 厚生労働省によると、実親と暮らせないと判断された子どもは約4万6千人。彼らは親の病気、家出、離婚、貧困、虐待などといった事情により同じの屋根の下で生活することができません。社会的養護として、大きく二つのアプローチがあります。児童養護施設などで育てる施設養護と里親やグループホームで育てる家庭養護です。施設で暮らす子どもが9割、里親などの家庭的な環境で育つ子どもは1割というのが現状です。

 施設の職員の数や規模にも限界があります。最近では、この家庭養護の普及のため国も動き出しました。2011年、保護が必要な子の3割が家庭的な環境で暮らす目標を掲げています。また今年5月にはさらに踏み込み、できる限り家庭的な選択肢を検討していく方針を児童福祉法に明記しました。

 里親制度には、養子縁組を前提に預かるタイプや、仕事が休みの週末だけ預かるタイプなど、里親のライフスタイルに合わせたさまざまな形が用意されています。一定の要件を満たせば誰でも制度を利用することができます。しかし、今まであまり普及してこなかったのはどうしてでしょう。やはり里親になってみると専門家のケアが必要になってくることが関係していると思います。

 私の家族も養育里親をしていました。虐待を受けた子どもの特徴がわからなかったり、物を隠したりする「試し行動」や退行が見られることもありました。どうしても里親と子どもの関係の煮詰まりが生じてしまうのです。そういった時に一人で悩まず、相談できる環境があれば心強いと思います。

 記事では活動に積極的な例として福岡市が紹介されています。家庭的な環境で育つ子の割合は32%で全国的にも高い水準です。児童相談所と市民の協働で里親が増えることを目指した「新しい絆」プロジェクトがあります。2年前になりますが、主体運営をしている「子どもNPOセンター福岡」に見学に行きました。そこで「ファミリーシップふくおか」というネットワークを知りました。臨床心理士や医療体制など家族を支援が整っています。さらに里親さんやこれから里親になろうとしている人たち同士で、普段の子どもの様子や自分の想いなどを、語り合うサロンもあります。

 これだけ世の中が多様化し、生き方も働き方も、婚姻も子育てもいろいろな価値が認められつつあります。里親としての家族のあり方がもっと認め合えたらいいなと思っています。そのためにもまずは福岡市のようなサポートが全国に広がればと願うばかりです。

参考記事:7日付 朝日新聞 20面(生活面)「施設から里親へ 広がる試み」