現地の姿を、声を伝えて

 21日午後2時頃、鳥取県中部を震源とする震度6弱の地震が発生しました。県内に住む友人が心配になりすぐに連絡をとると、「今まで経験したことのない揺れやったけど、大丈夫だよ」。返信が来て胸をなでおろしました。発生から時間が経ち、少しずつ被害の全容が明らかになりつつあります。今朝の新聞には、地震のメカニズムについての記事が多く見受けられました。地震は断層が水平方向にずれる「横ずれ断層型」タイプのものであり、未知の断層で起こった可能性が伝えられています。また、今後一週間程度は震度6弱級の地震に警戒が必要だと記事は伝えています。

 一方で紙面を読んで感じたのは、現地の声を報じる記事や写真が少ない点です。もちろん各紙の社会面において、被害や声はある程度伝えられていますし、地震の発生から間もないことも影響しているでしょう。紙面を割くということは、他の記事の掲載をあきらめるということでもあります。それでも、より大きなスペースを割いて、現地のありのままの姿や声を伝えてほしい。どんな問題が起こり、一人ひとりが何を感じているのか、現実味のある情報をもっと知りたい。これが率直な気持ちです。 

 現在も100回を超える余震が続いています。県内では約2700人が不安を募らせながら避難所につめかけ、車中で夜を明かす方も多いようです。現地でも多くの人が、具体的で正確な情報を必要としています。被害の大きさを報じるだけでなく、身を守るためにどう行動すべきかを示したり、地域の生活情報を提供したりすることも重要ではないでしょうか。

 また、これまでの教訓を生かし、避難所での生活におけるアドバイスや車中泊で注意すべき点など、役立つ情報を発信することも必要です。そして、これを地域向けの紙面だけでなく全国ニュースとして報じることが欠かせません。これから地震に遭遇するかもしれない私たちにとっても対策を講じる契機になると思うからです。

 新聞は、速報性という点においてはほかのメディアに劣ってしまうかもしれません。けれども、人と人との対話を大切にし、たとえ時間がかかっても隠れている事実を掘り起こす。これまでの膨大な調査やデータを生かした分析を進め、役に立つ情報を提供する。現地の外にいる私たちの心にもしっかりと記憶を刻み込み、防災を意識づける。このような報道こそ、今、求められていると思います。

 

参考記事 22日付け 各紙「鳥取県地震」関連面