過労死問題、改善はこれから

ちょうど1週間前、「過労自殺はなぜ減らないのか。なぜなくならないのか」というタイトルで記事を書きました。広告大手の電通で起きた、新入女性社員が過労を原因として自殺した事件。この事件を受け、東京労働局は14日、労働基準法に基づき電通本社などの抜き打ち調査に踏み切りました。長時間労働が常態化している疑いがあるとみて、出退勤記録などから実態解明をすすめ、法令違反があれば是正勧告する方針です。悪質な場合は刑事事件としての立件も視野に入れているようです。

自殺した高橋さん(当時24)の代理人弁護士によると、高橋さんは残業時間を労使協定で定めた月70時間以内に抑えるため、「労働時間集計表」に過小申告するよう指導されていたといいます。高橋さんは指導に従い昨年10月は「69.9時間」、同11月は「69.5時間」と実際より減らして記載していました。しかし、実際の時間外労働は月100時間を超えていました。入退館記録などをもとにした弁護士の集計では130時間に達したこともあったそうです。

 国としても、「働き方改革」を進める矢先に起きたこの事件の衝撃は大きかったことでしょう。「電通社員の方が過労死、いわば働きすぎによって尊い命を絶たれた。二度と起こしてはならない。働く人の立場に立った『働き方改革』をしっかりと進めていきたい」こう話したのは、安倍晋三首相。自ら議長を務める「働き方改革実現会議」に関連して開かれた意見交換会で、社名を挙げて過労自殺の防止に言及しました。

1週間前、記事中で「『国』対『企業』という構図ではなく、内部から過労という膿を吐き出させる取り組みが大切になる」と書きました。いまの段階は、まだ「国」対「企業」の状態でしょう。これから先、真相が解明されたのちに、「どう改善するか」「二度と起こさないためにどうするか」という議論になったとき、企業の内側から改善できるような動きが求められます。「電通は、謝罪の言葉だけでなく、しっかりとした改善策をとってもらいたい」と、高橋さんの母親の幸美さんも望んでいます。

参考記事:15日付読売新聞朝刊(東京13)1面「電通本社に立ち入り」

 15日付朝日新聞朝刊(東京13)2面「長時間労働常態化か」

                  15日付日本経済新聞朝刊(東京1339)「電通立ち入り調査」他関連紙面