パラスポーツを体験してみた

 身近に体験会が行われているのを知り、パラスポーツの体験会を訪れてみました。挑戦したのは車椅子バスケット。いざ、競技用車椅子に乗ってみると、思っていたより軽い。でもなかなか思うような方向に進めません。シュートを試みても、ボールが上がらない。いつもはジャンプしてボールを投げていますが、車椅子に乗ると足の力を借りることができないのです。 

 「腹筋と手の力を使うんだよ」。アドバイスをいただいて、ようやくリング近くの高さまで投げられるようになりました。ほかにも陸上競技用車椅子のレーサー に試乗したり、義足を手に取って反発力を感じてみたり。初めての体験に新鮮味と難しさを痛感しつつ、純粋にスポーツを楽しみました。パラスポーツというと障害者だけのスポーツと思われがちです。けれども、アイマスクをつけてブラインドサッカーを楽しむというように、健常者も共にプレーをする環境が広がりつつあるようです。 

 日本時間8日に開幕を迎えたリオパラリンピック。チケットの売れ行きが心配されていましたが、開会式は満席。競技にも関心が高まっています。私が考えるパラスポーツの魅力は、五輪競技とは異なる様々な特徴があることです。 

 例えば、昨日広瀬選手と藤本選手がメダルを獲得した視覚障害者柔道は、組んだ状態から競技が開始されます。このため、技の掛け合いが続き、柔道のダイナミックさを堪能できます。また、車いすバスケットは車椅子同士の衝突が頻繁に起こり、非常に激しくエキサイティングな戦いが繰り広げられます。連日、各紙ではパラ競技のルールが紹介されています。重度障害者でも参加できるボッチャや、鈴入りボールを用いて聴覚を頼りにプレーするゴールボールなどパラリンピック特有の競技もあります。詳しいルールを知ると、奥が深いパラスポーツをもっと面白く、身近に感じられると思います。 

 競技を楽しむとともに、パラリンピックからはメッセージが伝わってきます。先日、水泳種目に出場している一ノ瀬メイ選手が高校時代に発表したスピーチを目にしました。 

私は何でも自分でできます。しかし、自分が障害者であるように感じさせられることがあります。みんなが私をじっと見るとき、私をよく知らずに障害者のレッテルを貼るときです。

 彼女が訴えていたのは、障害の「社会モデル」。これは身体の欠損ではなく、社会の配慮の欠如こそが障害者の壁になることがある、という考え方のことです。9歳の頃、障害を理由にスイミングスクールへの入会を断られた悔しさが、今も水泳に打ち込む原動力になっていると話します。それでも彼女は、スピーチの最後に力強い言葉で伝えています。 

大切なことは、彼らを知らずに判断しないこと、知ろうとすること、みんなが違い、それぞれのやり方で特別な存在であることを受け入れることです。もし、社会が障害者を作るならば、社会はそれを止めることだってできるのです。 

 まずはパラリンピックを観戦し、パラスポーツを実際に体験することです。障害へのイメージや概念が変わるかもしれません。心のバリアを作っていたのは、私たちではないでしょうか。4年後には、東京パラリンピックが迫っています。互いの違いを認め合い、誰もが輝ける環境を目指すことで、社会も人の心も変えていく。そんなきっかけが生まれる「リオの12日間」であることを願います。

 

参考記事  7日付 朝日新聞 デジタル 京都「スピーチに込めた想い パラ競泳の一ノ瀬メイ」

              リオパラリンピック各紙関連面