「インターンシップの参加と、採用は一切関係ありません」。企業のインターンシップに参加したことがある学生なら、何度か目にしたことがある文言だと思います。筆者も、何度もこの一文を見ました。しかし、会社側がこの文言を学生に伝える必要がなくなる日も近いかもしれません。
インターンシップの実施企業数は年々増加傾向にあり、大手ナビサイト3社に6月1日時点で掲載されただけでも8000社を超えます。昨年の同時期では6000社程度。受け入れる側も、実施するメリットが大きいと実感していることが伺えます。
朝日新聞の記事では、千葉市にあるバルブ製造のキッツ本社で、小樽商科大2年の女子学生が3週間に渡るインターンシップに参加している様子が伝えられています。人財開発グループの三浦翔太さん(28)は、「取り組みが成功すれば、学生を長期で受け入れる仕組みにつながる。継続すれば企業ブランドの向上にもなる」と話しています。
無給のインターンシップが多い中、高額の給与を出すケースもあります。ウェブサイト運営を支援するファベルカンパニー(本社・東京)では、5日間で6人の学生を受け入れるプログラムを実施し、自社のサイト分析システムの改善策を提案してもらうそうです。優秀な人材を募るため、日給2万4千円、5日間で計12万円を支給します。採用コンサルタントの谷出正直さんは「企業が、早い時期から学生と接点を持とうと積極活用し始めている。学生にもメリットが大きいとの認識が広まっている」と述べています。
今のところ、政府が示した指針に沿ってインターンシップと採用活動は厳然と分けることになっています。しかし、企業からの要望もあり、政府は規制改革実施計画のなかで「企業がインターンシップで取得した学生情報の取り扱い」を議論することを決め、今年度中に報告書をまとめるそうです。
たしかに、学生にもメリットがたくさんあります。一つは、関心のある職業について良くも悪しくも理解が深まる点。そして、もう一つはさまざまな人と出会えるという点です。同じ業界を志望する学生とつながることができることはもちろん、社会人になった多くの先輩に出会えるということは、かけがえのない財産になると思います。事実、私はインターンシップでお世話になった方と手紙のやりとりをし、その手紙をずっと就職活動の「お守り」にしていました。
一方で、学生にとっては本業の「学業」への影響が少なからず出てくることも注意しなければいけません。就職活動が事実上「前倒し」になるとの批判も強まるでしょう。
企業側、学生側、双方のメリットとデメリットを踏まえた上での議論が大切です。そして、指針を通じて影響力を及ぼしてきた政府も、「現場の声」に耳を傾けて現状を改善する道を示していくことが必要だと考えます。
参考記事:
5日付 朝日新聞朝刊(大阪10版)30面(生活)「変わるインターンシップ 長い期間/高い専門性/高い給与」