万博から世界の無線局へ! 人と人が電波を通じてつながる面白さを実感

2025年4月から開催された大阪・関西万博。各国のパビリオンが開館する中でアマチュア無線の業務にあたる25年日本国際博覧会特別記念局も開設されました。

大阪・関西万博会場内の様子(9月16日、筆者撮影)

ブースの中ではアマチュア無線の体験運用が行われています。アマチュア無線の体験運用制度は科学技術や無線通信への関心を深めるために23年3月より始まりました。無線従事者免許を持っていなくても免許を持っている人の監督のもとであれば交信ができるようになったのです。筆者は免許を取得しているのですが、運用委員の方に手伝ってもらい交信しました。

アマチュア無線ブース(9月16日、筆者撮影)

 

始めに相手局を呼び出し、応答があると交信の始まりです。まず、相手のコールサインを聞き取り、運用場所と体験者の名前を伝えます。すると、相手も運用場所と名前を返してくれました。これをメモに書きとめます。続く交信では万博会場での猛暑の話などをし、お礼を言って終了しました。福島県や神奈川県、三重県などのさまざまな地方の方々と交信することができました。わずか5分ほどの交信でしたが、緊張もありとても長い時間のように感じました。

 

筆者の体験運用を手伝ってくれた方は特別記念局の運用委員である杉浦雅人さんです。小学生時代ラジオが趣味だった杉浦さん。日本だけでなく海外の放送を聞いている中で自分でも電波を飛ばしてみたいという思いが生まれ、無線に関心を持ったといいます。高校ではアマチュア無線の同好会を立ち上げ、大学に進学してからも無線研究会で活動していました。

特別記念局の運用委員である杉浦雅人さん(9月16日、筆者撮影)

 

現在は25年度末で閉校となってしまう京都府内の小学校で児童に向けて体験運用の機会を設けています。全校生徒の半分ほどが体験に訪れ、その中には免許を取った児童もいるといいます。

 

無線ブースからは、気候などの状態などによっては世界各国と交信することができます。8月1日には国際宇宙ステーションと交信し、宇宙飛行士の方に問いかけ、応答してもらうといったイベントが行われていました。さらに南極昭和基地とも交信できたそうです。

交信するためのアンテナですが、万博では会場内の建物の高さ制限から敷地内にはなく、ブースから約500メートル先の場所に設置されてリモートで運用されています。1970年に開催された大阪万博や2005年の愛知万博でも特別記念局が開設されました。当時の万博では体験運用制度がなかったため免許をもっている人のみが記念局から交信できたそうです。

インターネットが普及しスマホで簡単に人とつながることのできる時代です。体験運用などを通じて、アマチュア無線家一人ひとりが無線の面白さを周りの人に伝えていくことが無線に興味を持つ人を増やすうえで一段と重要になっています。アマチュア無線の資格を取得するにあたって無線に限らず、幅広く物事に関心をもつことが大切であると杉浦さんは話してくれました。

 

参考文献:

読売新聞オンライン 2025年8月28日付 「こちら万博 無線で世界にコンニチハ」…8K3EXPO、体験どうぞ

https://www.yomiuri.co.jp/expo2025/20250828-OYO1T50052/

日経電子版 2025年8月8日付 アマチュア無線、大阪万博に55年ぶり開局 通信体験で世界とつながる

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF01BKO0R00C25A7000000/