SusHi Tech Tokyo 2025 と日本のスタートアップの未来

2025年5月8日から10日にかけて東京ビッグサイトで開催された『SusHi Tech Tokyo 2025』。筆者は最終日の「パブリック・デイ」に参加してきました。

SusHi Tech Tokyo 2025 「入り口付近の様子」(2025年5月10日、筆者撮影)

広々としたホールには、無数の照明が取り付けられ、会場全体を明るく照らしています。来場者は展示ブースを眺めたり、互いに語り合ったりと、にぎやかな雰囲気に包まれており、熱気と活気が溢れていました。

『SusHi Tech Tokyo 2025(=Sustainable High City Tech Tokyo 2025)』は、持続可能な都市の実現を高度なテクノロジーで支えるという理念のもと、世界中の人々が集い、議論し、行動を起こす場で、東京都が主催するアジア最大級のスタートアップカンファレンスとされています。今年は会場規模を前回の1.3倍に拡大し、協業や投資につながる商談の機会提供や国際的な交流プログラムが充実しました。また、未来を担う若者たちに活躍の場を用意し、都市の未来像を体感できる先端技術の展示・体験イベント「パブリック・デイ」が新たに設けられたのも特徴です。

Student Pavilion “ITAMAE”にて「セッション・ピッチ・ワークショップなどの学生による企画が開催されるブース」(2025年5月10日、筆者撮影)

会場内にはさまざまな世代や国籍の来場者が集い、社会人や高校生、大学生だけでなく、家族連れの姿も多く見られました。多種多様なブースが立ち並ぶ中で印象的だったのは、スタッフや参加者が世代や言語の壁を越えて積極的に交流していた点です。会場全体が良い意味で「混沌」としており、まさに国際的な共創の場という印象です。

Meteor Stageにて「Superhuman Sports on Stage “R-FIGHT” デモンストレーションの様子」(2025年5月10日、筆者撮影)

Future Experience Pavilionにて「5mサイズの登場型ヒューマノイドロボット(MOVeLOT株式会社)」(2025年5月10日、筆者撮影)

会場を歩いていると、ひときわ大きな歓声が聞こえてきました。近づいてみると、大きなロボットを上半身に装着した二人が檀上で熱いバトルを繰り広げていました。これは「テクノロジースポーツ」と呼ばれるもので、今後、ゲームにあるような対戦をリアルなスポーツとして体験できる時代が来るかもしれないと感じました。

ロボティクス関連の展示は大人にも子どもにも大人気で、特に注目を集めていたのが、白い機体の搭乗型ヒューマノイドロボットでした。これは漫画・アニメ『機動警察パトレイバー』に登場するロボット「イングラム」を現実に再現したもので、内部に乗り込んだ来場者が指を動かすと、ロボットも連動する体験が楽しめました。その様子はまるで映画の一場面のようで、将来、本当にこうしたロボットが街の平和を守る日が来るのではないかと想像をかき立てられました。

All Japan Eco System Areaにて「ローカル5Gを活用した遠隔での農作業支援に関するブース(東京都農林水産振興財団)」(2025年5月10日、筆者撮影)

Startups C-675にて「割り箸をアップサイクルした様々なプロダクト(ChopValue Manufacturing Japan)」(2025年5月10日、筆者撮影)

数ある出展の中でも特に印象深かったのは、「遠隔での農作業支援」と「割り箸のアップサイクル」です。

ローカル5Gを活用した農業支援のブースでは、笑顔のスタッフが目の前に赤いトマトを差し出してくれました。勧められるままに試食すると、口の中に瑞々しい甘みが広がりました。てっきり熟練の農家による栽培かと思いきや、「これは農業未経験者が、遠隔で専門家のサポートを受けながら育てたものです」との説明です。

現地に行かずとも質の高い農業指導が受けられ、初めての栽培でも成功できる──そんな未来が現実になりつつあると感じました。高齢化と担い手不足に直面する日本の農業にとって、極めて実用的で希望の持てる取り組みだと思います。

また、スタートアップエリアで出会ったChopValueは、使用済みの割り箸を回収して高性能なデザイナーズ家具や建材に生まれ変わらせる事業です。すでに世界で2億本以上の割り箸を再利用しており、大阪万博のカナダパビリオンでは巨大な会議テーブルも制作したとのこと。実際に製品を触ってみると、もとは割り箸だったとは思えない滑らかで温もりのある質感に驚きました。日常生活を振り返ると、使い捨ての割り箸はそのままゴミとして捨ててしまうことがほとんどです。しかし、今後、こうした取り組みがより広く浸透すれば、廃棄物削減や木材資源の有効活用につながり、持続可能な社会の実現に大きく貢献するのではないでしょうか。

今回の『SusHi Tech Tokyo 2025』を通じて、筆者は「未来の都市」や「持続可能な社会」が決して遠い世界の話ではなく、目の前にある現実になりつつあるのだと実感しました。テクノロジーと人、そして多様な世代・国籍が交差しながら共創していくこのようなイベントは、私たち一人ひとりが社会のあり方に目を向けるきっかけとなります。今後、日本のスタートアップがこの流れの中でどのように進化し、社会課題の解決に貢献していくのか。大きな期待が寄せられます。

 

参考記事:

5月8日付 日本経済新聞電子版「国内外の新興企業集結『スシテック』開幕 東京ビッグサイトで」

参考資料:

SusHi Tech Tokyo 2025 公式サイト

「SusHi Tech Tokyo 2025」開催 アジア最大級のスタートアップカンファレンスをバージョンアップ|都庁総合ホームページ