男性も、涙を流せる世の中へ

 

これまでマンションギャラリー、モデルハウスの受付のアルバイトを経験しました。マンションの部屋や住宅を売る営業さんは、男性がほとんど。女性は多くありません。事務所内のホワイトボードには、それぞれの契約件数の目標数値や、チームとしてのゴールが書かれています。

朝早く通勤電車に乗ると、乗客は男性が多いことに気付きます。狭い車内で新聞を読んだり、読書をしていたり。反対に、平日のお昼間は主婦の方、とりわけ女性の姿が目立ちます。電車に乗る客層からも、まだまだ「男性=働くもの」という印象を受けます。たしかに、スーツを着てバリバリ働く男性の姿は、「かっこいい」と思います。しかし、私自身も含めて、多くの人が抱いているそのイメージが、男性自身を苦しめているかもしれません。

今朝の朝日新聞は、悲しい実情を伝えています。男女別の就業状態別「幸福度」では、正規雇用者以外、非正規雇用者、自営業主・家族従業者、退職者、学生などどの項目でも女性の方が「幸福度」が高いことが分かります。特に、主夫・主婦の欄は女性が43.6%であるのに対し、男性はその半数程度の21.0%。また、10万人あたりの自殺死亡者数は1950年からずっと男性の割合が多く、自殺の原因も「経済・生活、勤務」を理由とするのが女性は8.73%に対し男性は33.13%に上ります。もちろん、男性でも幸せな人はたくさんいると思いますが、データから読み取れる数字を考えると、胸が痛みます。

記事では妻をがんで亡くし、男手一つで中学生から幼稚園まで3人の子どもを育てるため、転職し「主夫」となった44歳の男性が取り上げられています。以前勤めていた職場では「育児や家事のために仕事を制限する姿は見られたくない」と、転職したそうです。「男のプライド」がそれを許さなかった、とあります。男性自身も、「一家の大黒柱として家族を養うこと」が「男らしさの象徴」と考えているようです。

男性学に詳しい田中俊之・武蔵大助教授は、「社会は男性に力強さを求めるから、弱みも見せられない。見えもあって弱音を吐けず、人に悩みも相談できない、涙を流すことさえ許されていない」と話します。「男性の生き方を根本的に見直し、もっと自然に自分をさらけ出せる社会になればいいのではないか」と語ります。

男女関係なくいきいきと生きるには、さまざまな価値観を受け入れられる環境が求められます。男性が家事や育児をすることも素敵ですし、キャリアウーマンのお母さんがいることも素晴らしいと思います。まずは、男性自身も「稼がなくては」というプレッシャーや、プライドから少しでも解放されること。家族や周囲の理解や協力も必要です。そして、たまには弱音を吐いたり、涙を流したりすることも大切でしょう。

この投稿を読んでいるあなた、頑張り過ぎていませんか。

参考記事:

18日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)1面(総合)男女が生きる 上『「オハラの夫」と呼ばれて』,2面(総合)『会社の呪縛 お酌も「仕事」』 『「稼ぐ」役割 無言のプレッシャー』 「男が家事 プライド許さず」