命の重みを勝手に決めないで

不愉快で仕方がありません。26日の朝一番のニュースが信じられませんでした。相模原市の障害者施設殺傷事件は、平成になってからでは、犠牲者の数で最悪の殺人事件となりました。

障害のある人も、ない人も誰もが安心して暮らせる社会の実現に向かおう。このような思いから、今年4月に「障害者差別解消法」が施行されました。これを題材にNHKのEテレで、日本は、障害のある人たちとどう向き合ってきたのかを検証する番組が作られました。戦後の障害者政策を当事者や政策立案に関わった人たちの証言をもとに構成されています。戦時中に障害のある方たちは、「米食い虫」「非国民」と呼ばれ抑圧されていたそうです。兵隊として戦えなかったからです。

戦争中は全員が苦しみ、憎悪や不満、不安で満ちあふれています。その感情の矛先は誰に向けられるのか。真っ先に切り捨てられる、生きている価値がないと決められる標的になってしまうのが障害を持つ方なのかもしれないと戒めました。今回の事件はこれと同じに思えます。

 「障害者なんていなくなればいい」

容疑者の男はそう供述しているようです。いなくなればいい命なんて一つもないでしょう。そして、私が今までに出会った知的障害をもつ友人やその家族の顔が浮かべました。なんて身勝手なんだ。そう考えざるをえません。

 「重複障害者に対する命のあり方は未(いま)だに答えが見つかっていない」

東京の衆院議長公邸に送った手紙にはそうつづられていました。命の重みは誰かが勝手に決めていいはずがないのです。

男は容疑を殺人に切り替えられ、横浜地検に送検されました。これから動機の解明に向かって調べが進むでしょう。精神疾患を抱えていたようです。

この悲劇がどうして起きてしまったのか。いくつもの予兆があっただけに、行政や病院、さらには警察の間で情報の連携は取れていたのかも調べる必要がありそうです。どんな背景があるのかわかりません。しかし、その被害の大きさはもちろん、社会的に弱い立場にある障害者をねらい犯行に至ったというならば、極めて卑劣で残忍な行為です。そして攻撃が弱者に向かうことを許すような社会にしてはいけないとあらためて強く思います。

 

 

参考記事:

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NHK Eテレ 戦後史証言プロジェクト「日本人は何をめざしてきたのか」シリーズ

2015年度第6回「障害者福祉 共に暮らせる社会を求めて」放送日:2016年1月16日(土)午後11時~翌0時30分