2024年10月1日に全国の最低賃金が改訂されました。筆者の住む地域でも時給が50円近く上がり、友人とともに喜んでいた一方で、扶養される学生の年収の壁「103万円」というボーダーラインが立ちはだかっている現実に落胆したことを覚えています。
「103万の壁」は、被扶養者である子供の年収がこの金額を超えると、扶養者である親の所得税の課税額が大きく変わる境目のことです。
通常親の扶養に入っている19歳以上23歳未満の「特定扶養親族」の対象者は、63万円の所得税控除を受けています。しかし特定の勤労学生を除いて、被扶養者である子供の年収が103万円を超えた場合、親の扶養控除をうけることができなくなります。扶養者の所得税率にあわせて、税負担が6万円または12万円増えるのです。
つまり子供の年収が増えたとしても、親の支払う所得税の金額によっては、家庭としてマイナスになる場合があります。「年間で支払わないといけない税金の額が変わるから、お願いだから103万円以内で働いて」と親から言われたことのある学生も多いのではないでしょうか。
筆者も時給1,300円の有給インターンと時給1,112円の飲食店のアルバイトを掛け持ちし、月収11万円ほど稼いでいたときは、年収の調整をしないといけないために10月頃からどちらにも入ることができず、「働ける時間はあるのに働けない」ともどかしい思いをしたことがあります。
また飲食店に勤める友人も「時給が上がることは嬉しいけど、働ける時間がより短くなってしまった。自分のお店は常に人手が足りないから、103万円を超えるしかないかも」と年末調整について困った顔で話していました。
時給があがることは非常に喜ばしいことです。就活や留学、部活の大会などに忙しい学生は、短時間で今まで以上に効率的に給与を得ることができるでしょう。しかし一年という長い期間で考えると、自分の得ることのできる給与は変わらないため、あまり意味がないようにも一学生として感じています。
6日付の日本経済新聞の夕刊には、特定扶養控除をめぐり、子の年収要件を緩和することで自民、公明、国民民主の3党が一致した旨の記事が掲載されていました。学生の選択肢を増やすという意味でも、迅速な制度の整備を期待したいです。
参考記事:6日付日本経済新聞夕刊1面「学生扶養する親の税控除、子の年収要件緩和 自公国が一致」
参考資料:
NHK「年収の壁 見直すとどうなる 減税額 年収による違いは? 103万円 税の壁の仕組みは?」2024年11月28日
https://www.nhk.or.jp/shutoken/articles/101/015/16/
最終閲覧日:2024年12月6日