西日本最大の矯正展 刑務所ってどんなところ?(下)

先日の記事では、関西矯正展の様子を紹介しました。今回は、受刑者の社会復帰を支える取り組みについて詳しくお伝えします。

各刑務所では就労支援として、木工、金属、洋裁、農作業などの技能を身につけることができます。毎日の刑務作業で作られたものは、矯正展や展示販売会などで販売されることもあります。

法務省が2018年、出所者を雇う協力雇用主に行った調査では、雇った出所者の約5割が半年以内に辞め、5年を超えて続いたケースは5.8%にとどまりました。「言われたことしかしない」「同僚とトラブルを起こす」などの声があり、「就労する上で必要な基礎的能力を(刑務所で)身につけさせてほしい」との意見が出たといいます。

来年6月には、懲役刑と禁錮刑が廃止されて拘禁刑が導入されます。拘禁刑とは、刑務所で更生のために必要な作業や指導を行う刑罰のことです。従来の刑務作業は残しつつ、各受刑者に合わせた処遇ができるようになります。

一部の刑務所では、受刑者の年齢や障害を踏まえた対応も進んでおり、知的障害などがある受刑者向けの認知機能を高める「脳トレ」、高齢者の身体維持に向けたトレーニングなどが行われているといいます。実際、筆者が見学した大阪刑務所でも、自転車型トレーニングマシンが導入されていました。

また、法務省の犯罪白書によると、刑務所に入所した受刑者の57%が再入所を繰り返しており、そのうち73%は無職、21%が住所不定という現状があります。再犯には生活の困窮状態が深く関わっていることがわかります。受刑者が社会に復帰するためには、単に刑期を終えるだけではなく、その後の生活基盤を支えるための支援が必要になっています。

日本経済新聞より引用

そのような中で堺市は、犯罪や非行をした人の更生を支援するため、刑務所、少年鑑別所、保護観察所、民間ボランティアなどと広範に連携することを発表しました。今までよりも緊密な連携ができるようになり、保護司だけではカバーしきれない医療や福祉なども補うことが可能になったといいます。

受刑者の社会復帰には時間と支援が必要です。刑務所内での教育や訓練は、その一環として重要な役割を果たしていますが、社会復帰後の生活基盤を支えるためには、行政や民間、地域社会の協力が不可欠です。今後、受刑者の更生支援がさらに充実し、再犯を防ぐための取り組みが進むことが望まれます。

今回、筆者は初めて矯正展に参加しましたが、親子連れや多くの人で賑わっていたことに驚きました。刑務所という普段は縁遠い存在だからこそ、一般の人々には実態を知る貴重な機会となっているのだろうと感じます。気軽に行くことができるイベントだったため、一度訪れてみることをお勧めします。

 

参考記事:

日本経済新聞「堺市、出所者の更生支援で官民連携 刑務所・保護司など 」

読売新聞デジタル「堺市、保護司面接で公共施設を提供へ…公民館など20か所」

読売新聞デジタル「『拘禁刑』来年6月導入控え、対人スキル養う刑務作業…円滑な社会復帰につなげる狙い

朝日新聞デジタル「懲役刑廃止へ、変わる刑務所 「受刑者との対話」模索」

 

参考資料:

法務省「令和5年版犯罪白書」