一人ひとりに目を向ける

「歴史的な日韓合意」と言われた慰安婦問題を巡る昨年末の合意から、28日で半年が経ちました。韓国政府が設立した財団に、日本政府が10億円を一括で拠出するというものです。ソウルの日本大使館前にある少女像の撤去に向けて、解決されるように努力することも盛り込まれました。

韓国政府は元慰安婦を支援する財団の設立を進めており、早い時期に正式に発足するとみられています。この財団に日本政府が拠出するという複雑な仕組みの裏には、過去の反省があります。1995年に財団法人女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)が設立されました。基金は元慰安婦のための償い事業として、約5億7000万円の償い金を用意しました。しかし、韓国国内で、償い金の受け取りを拒否する慰安婦が大半でした。さらに、受け取ろうとした人への非難も激しかったそうです。その点で今回は日韓が共に事業をする協力の姿勢が見られます。

昨年末の合意では「最終的かつ不可逆的」な問題の解決を確認しました。しかし外交上、解決しただけで、一人ひとりの慰安婦にとっては解決していない問題でしょう。踏ん切りの付け方は人それぞれです。アジア女性基金への批判とは反対に、元慰安婦41人のうち20人以上が今回の財団設立へ賛意を示しているといいます。

数の多い方に目が向けられがちですが、41人それぞれの思いや考え方があります。人数が少なくなってしまっているからこそ、さらに丁寧に一人ひとりの気持ちを、日韓両政府は汲み取らなければなりません。

参考記事:

29日付 読売新聞朝刊(東京13版)「元慰安婦財団 拠出いつ」4面(政治)