新しい合区制度に注目

目には青葉 山ほととぎす 初鰹

初夏の楽しみ方を江戸時代の俳人である山口素堂が詠ったものです。カツオは5〜6月にかけて旬の食材です。その水揚げ地で有名なのは高知県。どうしても旬を味わいたくなり、先日、訪れました。

高知県で注目されているのはカツオだけではありません。この夏の参議院選挙の動向にも目が離せません。「合区」選挙になるからです。1票の格差を是正するために改正公職選挙法が成立しました。これに基づき、都道府県単位の選挙区が初めて統合されました。「鳥取・島根」と「徳島・高知」という合区の誕生です。

私は選挙ポスターの前で足を止めたり、横目で歩いたりしている地元の方に声をかけてみました。出馬した人は、いずれも徳島県出身です。異郷人ということで寂しさを感じる住民もいれば、人柄で選ぶのではなく国政への姿勢で選ぶと割り切った人もいるようです。

そうしたなかで、まず合区という制度そのものについて住民の意見を聞くべきだという思いが強まりました。自民党候補者も野党統一候補者も、合区の解消を言及しています。自民党の参院幹部らが選挙制度改革案を提出した時を思い返すと、所属議員に「反対しないように」との根回しを始め、賛成過半数は確実な情勢でした。賛成派が多数の中で、当選後に少数派の意思を主張していけるのか不安です。

もう一つ気になることがあります。高知新聞などが5月に実施した世論調査によると、県民の選挙に対する関心度は61.5%。全国平均と比較すると低迷しているそうです。たしかにそのような声も聞かれました。

「選挙へいくぜよ」と言われても…。いままでの選挙と比べてなかなか関心が生まれない、ということでしょう。

関心が弱まり投票率が下がることには危機感を抱きます。民意を汲み取れるような制度改革を考えると、現状ではとても満足できません。あらためて参議院の存在意義を再考するときなのでしょう。「地域代表」の性格は参議院に委ね、衆議院は都道府県にこだわらないブロック制の比例代表にするなどといった議論があっていいと思います。

今年は18歳選挙権が話題になっています。しかし、先に述べたもう一つの新たな取り組みにも注目したいものです。高知県で「勝男(かつお)」に選ばれるのは誰なのでしょうか。

 

参考記事:27日付 読売新聞 東京13版 4面「参院1票格差 なお3倍超」