日本でも考えたい、「世代間の分断」

 育った環境や定年までの期間などが影響して、世代によって多数派の意見が違うことは多いです。ところが、「私の声を聞くことなく離脱が決められた」という17歳の声を聞くと、将来に禍根を残さないか心配になります。今日の朝刊はほとんどがEU離脱関連の話題です。中でも目を引いた記事が、日経新聞の「若年層、大半が残留」でした。

 投票先を分析した結果、若者の大半がEU「残留」に票を投じていたことが分かりました。全体で見ると、23日のイギリス国民投票の結果は「52%対48%の僅差で離脱派が勝利した」となりますが、実は世代ごとに大きな違いがあったようです。イギリスの調査機関によると、18歳~24歳の74%が残留に投票。25~30歳も62%が残留に投じています。ところが45歳あたりを境に離脱派が多数を占めるようになり、65歳以上では60%以上が離脱に投票しました。

 記事では、「育った環境の違い」とする見方を紹介していました。つまり、若者にとっては人やモノの移動の自由がある「EUの中の英国」が当たり前でした。一方で、中高齢者層にとっては大英帝国への懐かしさがあり、反EU感情が強い、という分析です。「大英帝国なんていつの時代だよ」と言いたくなりますが、インドの独立が1947年で、EUの発足が1993年であることを考えると、懐かしさを感じても不思議ではありません。

 さて、世代間の分断は、選挙権の拡張を控えた日本でも注目したいキーワードです。新しく投票権を得るのは、総人口のおよそ2%と言われています。対して、65歳以上の高齢者は25%を超えています。2%の中でどれだけ盛り上がっても、65歳以上の人々を巻き込めなくては、選挙の結果はあまり左右されないのが現実です。「私の声を聞くことなく決められた」という声が、参院選の後に日本でも聞かれる可能性があります。

 以上に関連して、読売新聞の小さな記事が興味深いです。英国の国民投票を前にして、「EUって何?」が多く検索されていたというもの。こういった基本的な疑問こそ、世代間で話合うにはピッタリです。日本の参院選についても、「どうせ高校生は受験で忙しい」などと思わず、家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。世代間の分断は、少し柔らかいものになるかもしれません。

6月26日付 日本経済新聞社朝刊13版 5面『若年層 大半が「残留」』
6月26日付 読売新聞朝刊13版 7面『「EUって何?」2位』

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