国際宇宙ステーション(ISS)とは、一体どういうところなのか。知っているようで知らないISSを、本日付のニュースとともに紹介したいと思います。
文部科学省の有識者委員会は15日、ISSに日本が2020年以降も参加するべきだとする結論をまとめた。(中略)委員会は、ISS参加の成果として、若田光一さんが日本人初の船長を務めたことや、骨粗しょう症の治療薬開発など基礎研究を挙げた。(=朝日新聞2014.7.16日付)
「『ISSに日本が20年以降も参加するべきだ』と、有識者委員会がまとめた」というこのニュース。なんだか分かりにくい…。そこでまず、ISSとは何なのかを見ていきます。ISSとは1984年、当時のレーガン米大統領が建設を提唱した「宇宙基地」のことです。98年に組み立てを開始し、2011年に完成しました。大きさはサッカーコートと同じくらいで、高度400㌖上空を音速の20倍以上の速度で飛行しています(なんと、約90分で地球を一周!)。現在ISSは、米国、日本、カナダ、欧州、ロシアによって運営されています。常時6人の宇宙飛行士が滞在し、日々任務に励んでいます。
ISSに滞在する宇宙飛行士は、無重力空間を利用して様々な実験をしています。例えば、ある菌の毒性が無重力空間で強まることが判明したとします。するとそこから「毒性を強める『何か』が無重力空間に多くあるのでは?」という仮説が導き出されます。その「何か」を突き止めることが出来れば、「何か」を減らすワクチンの製造へと応用が効きます。こういった具合に、実験は目に見える成果へと繋がっていくのです。
では、上記のニュースにもあるように「2020年以降の参加」が何故注目されているのか。これは、2020年以降もISSを継続させるかが決まっていないためです。各国政府間の取り決めでは、ISSの期限は明記されていません。そこで各国は、2020年まで運用することでは合意しました。しかし、それ以降はまだ白紙なのです。
米国は今年1月、ISSを2024年まで運用することを提案しました。これに対してロシアは5月、ISSに2020年以降は参加しない可能性を示唆しました。ロシアの姿勢の背景には、日米欧によるウクライナ問題に関する制裁があります。国際政治の問題を、ISSを人質に解決しようとする動きだと言えます。今回の文科省の有識者委員会は事実上、日本は米国の提案に賛同すべきだと迫ったものだと言えます。
科学は人類共通の恩恵をもたらします。ISSも例外ではありません。宇宙で得られる成果は、やがて新薬など目に見えた形となり、人々に還元されます。自国の都合で一方的に手を放すのは、人類への裏切りともとれます。今後、日本や米国は科学の舞台でも難しい外交を求められるでしょう。