所変われば就活変わる 就職氷河期の中国

今年3月、2025年に卒業する大学生・大学院生の就職活動が解禁されました。就活生の皆さんは、ES(エントリーシート)の提出や面接練習に追われる日々を送っているのではないでしょうか。26年に卒業予定の筆者も、ゆっくりしている場合ではありません。先週は合同企業説明会に参加し、自己分析や業界研究を進めてきました。夏には個別企業の説明会やOG・OB訪問にも行く予定です。大学生気分をまだまだ味わいたいと思いつつも、渋々就活を「始めてしまった」といったところでしょうか。

日本の大学生が就活に奮闘している今、中国でも新卒向けの就職説明会が行われています。中国では日本以上に学歴を重視され、一流大学の中でもひと握りの学生だけが内定を掴んでいます。そして何よりもまず、平均就職倍率77倍の壁を乗り越えなければなりません。

現在、中国の大卒の就職難はさらに深刻化しています。中国国家統計局によると、都市部における16歳〜24歳の失業率は昨年6月に21.3%を記録、過去最悪の数値となりました。なお、算出方法を見直した結果、今年度3月時点で同年齢の失業率は15.3%に修正されましたが、年々失業率が上がっていることに変わりはありません。日本の若者失業率と比べると、中国は真逆で悪化の一途を辿っていると言えます。なぜ中国の若者の失業率がこれほど深刻化しているのでしょうか。

 

(全国城鎮調査失業率の推移 ビジネス+ITホームページより引用)

 

(日本の若者失業率の推移 総務省「労働力調査」より抜粋)

 

23日の読売新聞には、「中国経済の低迷」「大卒者数に見合わない採用人数」「私立大学の教育の質の低さ」の3つの理由が述べられていました。私はそれらの理由に加えて、「就職以外の進路に追い込まれること」が原因ではないかと考えました。

以前、筆者の大学の中国人学生に留学の理由を聞いたところ、「日本の大学生はみんな留学しないの?」と不思議な顔をされました。「大学を卒業しても就職できない。だから留学して在学期間を伸ばしている。大学院に行く人やわざと留年する人もいる。また共産党の影響下にあるため、卒業後に就職できない現状を隠すためか、大学側も就職以外の進路を勧めてきた」。

学生期間をあえて伸ばしてまで就活を遅らせる方法が当たり前だと語る彼女は、将来に絶望を抱えているようにも見えました。では、就職しないという手段はどうか。いいえ、中国では通用しません。中国では昔から「大学を卒業していい企業の幹部になる」という考え方が一般的。彼女も両親から幹部になれと何度も言われ、ストレスから逃げるようにして日本に来たとも話していました。

彼女の話と記事の内容を踏まえ、日本と中国では就職に関する価値観が大きく異なること、また日本人の生き方がとても自由であることを実感しました。フリーランスやフリーター、ニート、起業など、会社に就職せずとも選択肢はたくさんあります。彼女のような若者が前向きに将来を考えられるためには、中国の就活制度が見直されなければなりません。

 

参考記事:

・3月11日付 朝日新聞オンライン 倍率3000倍以上も 公務員に殺到する中国の若者 就職難に悲鳴

・4月23日付 読売新聞オンライン 中国、大卒の就職難がより深刻に

 

参考サイト:

総務省「労働力調査」

中国国家統計局「全国城鎮調査失業率の推移」