2024年は、世界各国で重要な選挙が行われる年です。3月にはロシア大統領選が、4月には韓国総選挙が実施されました。11月のアメリカ大統領選挙については、バイデン大統領とトランプ氏の言動が連日報道されています。トランプ氏が返り咲いた後の社会を意味する「もしトラ」が日本国内で頻繁に飛び交うように、選挙結果を世界中が注視しています。それは、国際社会や各国に与える影響が非常に大きい国であるから、だと思います。
しかし、国際社会への影響力が強い国は、アメリカだけではありません。人口が最も多いインドの国政も世界情勢に大きく関わってくるはずです。19日に投票が始まったインド総選挙の動きにも目を向ける必要があります。
◾️大国インドにおける選挙事情
約328万平方キロメートルの広大な国土に、14億1700万人超が住んでいる人口大国。その総選挙も、想像を遥かに超える規模で行われています。
有権者は約9億7千万人。政党数は約2600。選挙管理委員会の職員は1500万人にも上ります。文字を読むことのできない人が多いため、電子投票マシンを使用し、政党のロゴマークを押すことで投票します。高齢者や障がいのある人など、一部には郵便投票も認められています。
今回の選挙は、任期5年の543議席を争う下院選です。投票は7回に分けて実施され、6月4日、一斉に開票されます。
◾️インド政治の現状・課題
現在、与党インド人民党のモディ政権が実権を握っています。人口の約80%を占めるヒンズー教を重視する政策を実施し、選挙では経済発展や汚職撲滅などを掲げています。 モディ首相の圧倒的カリスマ性から与党は国民の人気が非常に高く、現地のあらゆる調査で政権維持の可能性が高い、との結果が出ています。その場合、モディ首相の3期目続投が見込まれています。
高い支持率を誇るモディ政権ですが、課題も多くあります。第一に、足りない貧困対策。経済は発展しているものの、その恩恵が市民まで伝わっていない、との声が国内で広がっています。また、失業率など公表されていない経済統計が多く存在しており、報道の自由が完全に守られているとは言い難い状況です。そして最も大きな課題は少数派の権利が抑圧されている点です。ヒンズー至上主義に伴い、少数派であるイスラム教徒の権利が抑圧され、国民の分断も懸念されています。
◾️インドは世界最大の民主主義国家なのか
「グローバルサウス」と呼ばれる新興国のリーダー的存在を自認するインド。ならば世界最大の民主主義国としての立場も示していくべきです。健全な民主社会には自由な報道が必要です。政権に有利な形で選挙を進めるために財力や宗教で国民の分断を煽るなど、言語両断です。モディ政権の強権政治には目に余るものがあります。
公正で透明化された選挙が行われているのか、自由な言論に支えられた民主政治が機能しているのか。同じアジアに位置する民主主義国として、日本はインドの動向にもっと目を向けるべきです。
参考記事
・4月22日付 朝日新聞デジタル モディ政権で「筋肉質」になったインド 首相が目指す指導者像とは
・4月21日付 読売新聞オンライン [社説]インド総選挙 「民主主義」の内実が問われる
・4月20日付 読売新聞オンライン インド総選挙 与党優勢か 投票始まる 経済成長アピール
・4月20日付 朝日新聞デジタル (インド総選挙2024 大国の行方)貧困解消・宗教共存、願い込め 投票スタート、6月4日開票
・4月20日付 日経新聞電子版 [社説]民主主義を試すインド総選挙
・3月17日付 日経新聞電子版 世界の選挙ガイド2024 顔ぶれ・見どころ解説
参考資料:
・4月19日付 NHK 「キャッチ世界のトップニュース」
・外務省 インド基礎データ