延ばすなら、具にすべき「善後策」

三重県伊勢志摩で行われた「G7サミット」。懸念されていたテロなどもなく、無事に終わりました。サミット後の首脳宣言では、金融政策、財政出動、構造改革の「3本の矢」を先進7ヶ国(G7)で実行することで一致しました。

注目すべきは、「財政出動」。28日夜、安倍首相は首相官邸で、麻生副総理兼財務相、自民党の谷垣幹事長、菅官房長官と会談し、来年4月の消費税率10%への引き上げについて、2019年10月末まで2年半延期したい考えを伝えました。背景には、増税が与える「財政出動の効果」への影響が関係しています。

首相が「2年半」の延期を考えている理由には、かねてから訴えている「デフレ脱却」と、19年夏の参院選があります。「アベノミクス」は失速気味。デフレ脱却のためにはなるべく増税時期が遅い方が得策だと判断したようです。また、「2年先送りだと増税直後の選挙になる」と与党内の懸念に配慮した面もありそうです。増税延期を決定したら、野党各党の批判は必至でしょう。首相がどのように「増税延期」の経緯を説明するかも注目されます。

一方、増税延期が決まっても、政府は保育の受け皿拡大など社会保障拡充策の一部を先行実施する予定です。安定財源が確保できない中で、歳出が一段と膨らむ恐れもあります。

東日本大震災のような災害や、リーマンショックのような経済危機が起きない限り、「増税延期」を否定してきた首相。伊勢志摩サミット後の首脳宣言を利用して、「前言撤回」をしているようにも見えます。大切なことは、もし増税先送りをするのであれば、「どのような手段で」社会保障費を賄っていくのかをきちんと明らかにすることです。「選挙の時期」などにとらわれずに、本当に国民のことを考えた財政再建が求められているのではないでしょうか。

参考記事:

29日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)1面(総合)『首相、増税再延期を伝達 「19年10月」麻生氏らに』

同日付 読売新聞朝刊(大阪14版)1面(総合)『消費増税「2年半延期」 首相、麻生氏らに伝達』,2面(総合)「デフレ脱却最優先」,4面(政治・経済)「与党内慎重派 説得カギ」

同日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)1面(総合)『消費増税「19年10月に」 首相2年半延期の意向』