モノだけでなく、閉鎖や廃校となった校舎も再利用

昨年の3月末に閉鎖された「神奈川大学湘南ひらつかキャンパス」の土地や建物の購入を希望する事業者の公募が9日から始まったと昨日の朝日新聞朝刊で紹介されていました。応募する企業などには跡地利用計画のほか、地域活性化事業などを盛り込んだ提案が求められ、大学が設ける選考委員会が総合的に評価するプロポーザル方式で譲渡先を選定します。

閉鎖や廃校となった校舎の再利用は増えており、背景には「大学側の都心回帰」や「少子化問題」があげられます。例えば、15年に閉校された「大妻女子大学狭山台キャンパス」は、肉まんやあんまんなどで知られた中村屋が買い取り、19年に工場として生まれ変わりました。当時の図書館棟は、日本発の「中華まんミュージアム」に様変わりし、入場無料なこともあって県外からも多くの観光客が訪れているといいます。

このように、単に工場用地とするのではなく、ミュージアムとしても活用すれば、商品の認知度を高めるだけでなく、その地域のことを知ってもらう機会となったり、特産品などを購入するきっかけともなり、地元の経済を潤す効果も考えられます。

また大学だけでなく、小学校の再利用も進んでいます。東京・多摩市の小学校は、1994年から統廃合が始まり、ピーク時の37校が26校に減りました。使わなくなった学校用地は貸し付けられ、学校法人による大学施設の設置、民間事業者の活動拠点などに転用されているといいます。

ただ、文科省が昨年5月に出した廃校に関する情報によると、「活用用途無し」となっている廃校が全国で1424校にのぼっています。建物の老朽化のほか地域の要望がないこと、財源の確保ができないことが原因です。文科省は廃校利用を促すべく、「みんなの廃校プロジェクト」と題し、自治体と企業等へのマッチングに取り組んでいます。

プロジェクトの展開によって地域振興が進むことを望みますが、事業者にとっては貸し付けによる利用料の問題もあります。廃校の利用で一度は注目されるでしょうが、そこからどう維持していくのかにも目を向け、長期的な計画が重要かと思います。

これからますます少子化が深刻になり、長い時間を過ごした学校が閉鎖することが多くなっていくことが予想されます。筆者の通っていた小学校に設置されていた遊具が減っていたりするのを目にすると、いつかは閉鎖されたりしてしまうのかなと悲しく思うこともあります。たとえ統廃合などで学校がなくなっても、校舎や校庭を閉鎖するのではなく、新たな形で多くの方に愛されるようなものになっていってほしいものです。

 

【参考記事】

12日付 朝日新聞朝刊(13版)23面(地域面)「平塚の神大キャンパス跡 購入事業者の公募を開始」

23年3月15日 読売新聞オンライン「神大跡地利用で協議会 平塚 『地元に資する売却先に』」

 

【参考資料】

文部科学省「廃校施設の有効活用について~みんなの廃校プロジェクト~」(最終閲覧日‐2月12日)

神奈川大学「湘南ひらつかキャンパス売却に向けた優先交渉権事業者選定について」(最終閲覧日‐24年2月12日)

多摩市公式ホームページ「多摩市の現在から未来へ」(最終閲覧日‐24年2月12日)