2月6日、総務省から家計調査の前年集計結果が公表されました。この統計は、県庁所在地などの全国約9千世帯を抽出し、毎月の家計内容を報告してもらうことで作られます。毎年、国民生活の実態が読み取れる重要な指標として注目が集まります。中でも関心の的となるのは「消費支出」の項目です。
特に食料品が注目され、今年の新聞にはギョーザの一世帯当たりの購入額1位の浜松市や、ラーメンの消費支出額で1位の山形市に関する記事が多く掲載されていました。
このような統計結果は、地域おこしにつながる可能性を秘めています。宇都宮市は現在でこそ、「ギョーザのまち」として高い知名度を誇ります。しかし、このイメージは1990年、同調査の結果に着目して地域おこしを進めたことによって定着したものだそうです。意外性のある結果は、地域の新たな魅力の発見に一役買うかもしれません。
私の住む京都市では、どんな食料品が多く消費されているのか調べました。「油揚げ・がんもどき」や「ほかの大豆製品」、ようかんやまんじゅうを除いた「ほかの和生菓子」では上位に、さらに大根や白菜などの漬物を除いた「他の野菜の漬物」という項目ではトップと、京都イメージに合った消費動向が分かります。実際に暮らす中でも、漬物店や豆腐屋を見かけることが多いため、納得の結果でした。
一方で、和食のイメージが強い京都ですが、パン食が人気であることも読み取れます。「パン」の支出額は神戸市を筆頭に京都市や大阪市など関西の都市が上位を占め、パンと共に消費する「ジャム」への消費額は京都市がトップでした。市内を歩くと、いたるところでパン屋を見かけます。
「コーヒー」の支出額も2位(購入量は1位)ときわめて高いことが読み取れます。「イノダコーヒー」や「前田珈琲」、「小川珈琲」など有名店をはじめとした、喫茶店やコーヒー豆販売店が点在していることから、コーヒー文化が根付いていることが考えられます。
一方で、「牛乳」の支出額が2位(1位は奈良市)という結果は意外性がありました。酪農が盛んなイメージのない京都ですが、パンとともに消費することが一因として考えられます。しかし、そうであれば「パン」の支出額1位の神戸市が京都市より低い理由があるはずです。
日本経済新聞の「京都『ミルクコーヒー』始まりは 大正~昭和、議論のお供」(2020年7月7日付)には、「京都中心に喫茶店を展開する『イノダコーヒー』の1番人気は、植物性油脂由来のフレッシュミルクと砂糖があらかじめ入った『アラビアの真珠』だ。注文時に『ミルクと砂糖をお入れしてもよろしいでしょうか』と尋ねられる。京都に長く住む知人から『入れて飲むのが京都スタイル』と聞いていた」という一節がありました。コーヒーと牛乳をセットで楽しむのが京都流なのかもしれません。家庭でもコーヒーと牛乳のセットが楽しまれていることが想像できます。
その他にも、「ピーマン」や「牛肉」、「コロッケ」など、京都の印象が薄い食材でも支出額で上位に入っていました。皆さんの住む地域にも意外な人気食材があるはずです。家計調査をもとに、献立や旅行の計画を立てると新たな食文化に気付くかもしれません。
参考記事
2023年納豆購入額、水戸は全国3位 総務省家計調査 [茨城県]:朝日新聞デジタル (asahi.com)(2024年2月10日付)
ギョーザ購入、宮崎市の3連覇ならず…浜松市の1位奪還に「イベントなどいろいろ仕掛けたい」:地域ニュース : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)(2024年2月7日付)
山形市、ラーメン日本一連覇 支出額1世帯1.7万円 – 日本経済新聞 (nikkei.com) (2024年2月6日付)
参考資料
家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 年次 2023年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)