賑わいを見せる大阪・梅田百貨店〜百貨店にもまだ未来があるのか〜 

1月18日、茨城県警が水戸京成百貨店(水戸市)の元社長を国の雇用調整助成金を騙し取った詐欺容疑で逮捕しました。雇用調整助成金は、新型コロナの影響で事業縮小に追い込まれた場合に従業員の雇用を守るために休業手当などの一部を助成する制度で、返済義務はありません。

県警によると、元社長は従業員らと共謀のうえ、実際には出勤していた従業員の勤務データを改ざんし、休業日を水増しした雇調金申請書を茨城労働局に提出していました。2020年9~10月の間に2回、約1億3300万円を詐取した疑いがあります。コロナ禍の赤字を恐れたことが犯行の動機とされています。それでなくても疲弊していた百貨店にとって、コロナ禍は大打撃となったのでしょう。

以前、筆者が「セブン&アイHD、そごう・西武を売却 地方でも百貨店閉店相次ぐ」「今後地方百貨店はどうなっていくの…強豪・大型商業施設」などで取り上げたように、地方百貨店は次々と閉店に追い込まれています。

筆者の地元広島県のそごう広島店の新館は、去年の8月に閉館しました。その影響で家族と百貨店へ行く際は、車で大阪まで足を延ばすようになりました。梅田駅付近には、大丸梅田店、阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)、阪神梅田本店が堂々たる佇まいでそびえ立っています。地方の店が疲れ果てているのに、大阪の百貨店は人で賑わいキラキラして見えました。現に2022年度の阪急本店の売上は2610億円と、前年比で30,1%増と飛躍的に伸びています。

大阪の百貨店にこれほど活気があるのはどうしてなのでしょうか。

まず大都市である大阪だから、と考えたくなります。しかし、東京では去年の1月末に東急百貨店本店(渋谷区)が閉店。同年12月28日に西武池袋本店(豊島区)の改装案がまとめられ、売り場面積は半減する見通しとなりました。東京では百貨店へのこだわりを捨てて、時代に合わせた再開発を進めています。渋谷区で言えば、12年に「渋谷ヒカリエ」、19年には「渋谷スクランブルスクエア」と複合商業施設が次々と開業しています。一方、大阪では「グランフロント大阪」のような複合商業施設と百貨店が共存しながら競い合っています。

大阪で百貨店が受け入れられる理由を筆者なりに考えました。梅田の3つのデパートが地下でつながっていることが大きいのではないでしょうか。JRや私鉄、地下鉄の駅に直結し、雨の日でも濡れることがなく、かつ1度に3店を回れるのは大きなメリットではないでしょうか。地方百貨店や東京の百貨店では見ることのない、回遊の仕組みが大阪で百貨店が生き残れる秘訣だと思います。

しかし、11年にJR大阪三越伊勢丹が強豪百貨店に挑みましたが、2014年には閉店した事実もあります。となると、梅田という大阪の中心地でもこれ以上は受け入れられないのかもしれません。

では大阪でも梅田以外にある百貨店はどうなのでしょうか。北部に千里阪急(豊中市)があります。2022年度の売上高は137億円で、阪急本店の19分の1です。

大阪府の中心部から外れており、梅田駅から地下鉄で約25分かかります。周辺の住民でなければ梅田に足を向けるでしょう。ちなみに、地下鉄の駅には直結していますが、モノレールの駅に直結していないのも難点です。しかも、梅田の3店に比べるとブランドの店舗数が物足りません。ブランド品を求める外国人も梅田駅へ集まるでしょう。大阪の百貨店が賑わいを見せているというのは、正確には梅田の百貨店のことといえます。

地方百貨店の衰退とは対照的に売上を伸ばし続ける大阪・梅田の百貨店。土地柄や時代にあった形で、消費者に受け入れられる営業を続けているようです。

 

参考記事:

・2023年2月2日付、読売新聞オンライン、「客と百貨店以上の深い信頼関係・要求レベル高い…渋谷の「シンボル」東急本店に終幕」(2024年2月5日参照)

・2023年12月28日、日本経済新聞、「そごう・西武、西武池袋で高級ブランド維持 衣料品縮小」(2024年2月5日参照)

・1月4日付、日本経済新聞、「百貨店5社の23年12月増収、高額品けん引 初売りも好調」(2024年2月5日参照)

・1月19日付、朝日新聞デジタル、「水戸京成百貨店の雇調金詐欺事件 苦境にあえぐ地方百貨店の事情は」(2024年2月5日参照)

・2023年2月3日付、東洋経済オンライン、「東急本店閉店の水面下でうごめく「外商」争奪戦」(2024年2月5日参照)

・2023年5月15日付、再都市化、「【2022年度 店舗別売上高】阪急うめだ本店の売上高は過去最高の2611億円!来年度は2847億円を予想。阪神梅田本店は553億円で来年度688億円を見込む」(2024年2月6日参照)

・2023年5月17日付、DIAMOND Chain Store online、「渋谷の本店閉店で東急百貨店が向かう “百貨店”にこだわらない「新しいリテール」の姿とは」(2024年2月5日参照)

参考文献:

・厚生労働省、「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」(2024年2月5日参照)

千里阪急ホームページ(2024年2月6日参照)