「コト消費」広がる観光 酒蔵が醸す地域の活気

先日、京都市上京区の酒蔵「佐々木酒造」で日本酒の試飲(有料)を体験しました。普段は手の届かない高級酒など気軽に楽しめます。佐々木酒造では試飲だけでなく、地の利を生かした観光にも力を入れています。

筆者撮影:佐々木酒造の試飲コーナー・一回500円で3種類の日本酒が楽しめます(京都市上京区)

筆者撮影:佐々木酒造の試飲コーナー・一回500円で3種類の日本酒が楽しめます(京都市上京区・2024年1月29日)

「京都洛中酒蔵ツーリズム」と題し、酒蔵の見学や周辺の歴史散策などを組み合わせ、「酒」という視点から京都を楽しむ観光プランがあります。中には、市内の大学や企業と協力した企画も。日本酒と観光を掛け合わせることで、今までにない視点で京都を楽しむきっかけとなりそうです。

このように、地域に点在する酒蔵を巡り、蔵の見学や利き酒を楽しむことを目的とした観光は「酒蔵ツーリズム」と呼ばれ、一つのコンテンツとして人気を博しています。

筆者撮影:月桂冠大倉記念館・現在はリニューアル工事中のため、一部エリアのみ見学可能(京都市伏見区・2024年2月1日)

関西随一の酒処、京都・伏見でも日本酒のイベントが実施されています。伏見にある「月桂冠大倉記念館」では日本酒について学べるだけでなく、月桂冠が醸造する日本酒の試飲も楽しめます。周辺は商店街や飲食店が立ち並んでいるため、酒蔵以外にも地域を味わえる観光要素が揃っています。

筆者撮影:月桂冠大倉記念館・月桂冠について学びながら、日本酒を味わえます(京都市伏見区・2024年2月1日)

農林水産省の調査によると、日本酒の国内出荷量は減少傾向にあります。そんな中、現地に赴き、その地で愛されてきたお酒を味わうことは、所有を中心とした「モノ消費」から、体験を目的とする「コト消費」に消費行動の動機がシフトしつつある昨今において、効果的な施策であるはずです。

現在の京都では、一部エリアに観光客が集中する「オーバーツーリズム」が社会問題化しています。新たな視点での楽しみ方が広がれば、京都市内の観光客の分散化が期待できるでしょう。観光による恩恵を受けてこなかった地域にも注目が集まり、地域全体の経済活性に繋がります。酒蔵は地域に活気を醸す力を秘めているかもしれません。

 

参考記事

京都市・佐々木酒造 洛中で唯一の酒蔵、名水を生かす – 日本経済新聞 (nikkei.com)

京都めぐり「定番以外も楽しんで」…分散化でオーバーツーリズム解消へ:地域ニュース : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

冬の酒蔵、再会を喜ぶ味 佐々木蔵之介さんの母の味と蔵人の唐揚げと [京都府]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

参考資料

ツーリズム情報 – 京都洛中・佐々木酒造株式会社のホームページへようこそ (jurakudai.com)

「日本酒をめぐる状況」(『農林水産省』2023年9月)sake-7.pdf (maff.go.jp)