2019年、世を震撼させた、京都アニメーション放火殺人事件。アニメ制作会社「京都アニメーション」にガソリンが撒かれ、36人の犠牲者、32人の重軽傷者を出しました。全身の93%をやけどし、予測死亡率は95%とされていた青葉被告は事件から1か月後、奇跡的に意識を取り戻しました。
青葉被告は幼いころに両親が離婚、父親に引き取られたものの、その父親からは日常的に虐待を受けていました。高校は定時制の夜間部へ通い、昼間は県庁の非常勤職員として働きましたが、人件費抑制などのため仕事をクビに。その後仕事も続かず、無職に。そのような中で京アニの作品と出会い、京アニの作品募集に応募したものの、落選。そこから、京アニにアイデアを盗作されたなどと妄想を抱き始め、この事件を起こしました。
昨年12月6日に行われた裁判では、「ひとりひとりに目標があり、応援する家族もいたのにその全てを握りつぶしてしまった。悔いがある」「申し訳ございませんでしたという言葉しか出てこない」と、初めて謝罪の言葉を口にしました。判決は明後日下されます。
青葉被告は、この事件を起こす前にも、コンビニエンスストアに押し入り、強盗事件を起こしています。その際の精神鑑定書には、この世の中頑張っても仕方がない、世間に疲れた、人間関係が面倒と述べていました。また、京アニ事件犯行直前の10分前、犯行を思いとどまったものの、「光の階段を上る京アニに比べ、自分の半生はあまりにも暗い。やはりここまできたらやってやろう」との思いから実行に移したと裁判で述べています。
もちろん、このような事件を起こしたことは、到底許されないことです。死刑が確定したとしても、当然のことだと思います。しかし、どこか他人事ではないようにも思います。世間に疲れた、人間関係が面倒、など誰でも一度は思ったことがあると思います。その疲れを自分で制御するか、他人に当たるか。その一線を超えるか超えないかの違いだと思います。一線を超えないために、そして二度とこのような事件を起こさないために、この京アニ事件を側だけ見て、ただ単に「青葉被告は死刑にするべき」「青葉被告ありえない」などという言葉で、この事件を片付けてはいけないのではないでしょうか。
参考記事:朝日新聞デジタル:京都アニメーション放火殺人事件 連載:螺旋
TBS 報道特集 1月20日 京アニ放火殺人 青葉被告とは