韓国に押される日本のエンタメ 感じるTVドラマの変化

昨日21日から日本テレビで放送開始の「厨房のありす」。自閉スペクトラム症(ASD)の天才料理人のありす(門脇麦)が、生きづらさを抱えながらも、驚異的な記憶力と化学の知識を活かし美味しく優しい料理を作る。切なくて温かい、ハートフル・ミステリーだそう。

電車内の広告で、知っている劇作家の方が脚本担当と分かり、前々から少し気になっていました。主人公が障がいを持っていたり、父親がゲイのシングルファーザーであったり、ステレオタイプの家族像ではなく、多様性を感じる設定だと思いました。

第1話を見ながら、22年にNetflixで配信され、ヒットした韓流ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」に似てるなあと感じました。こちらはASDを抱える新米女性弁護士のウ・ヨンウが法廷、そして私生活での壁を乗り越えるヒューマンドラマです。ASDという設定だけではなく、主人公は突出した記憶力を持っていること、家がシングルファーザーであること、主人公に惹かれていく男性がいるなど類似点はいくつもあります。「厨房のありす」はお料理版ウ・ヨンウというような印象です。

他にも、21年の「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」や、22年の「ユニコーンに乗って」などのドラマも、オリジナルと言いながら、タイトルや内容、設定が特定の映画や韓流ドラマを彷彿とさせるとSNSで話題になっていました。

似てると言われる作品は、どれもサブスクで配信され、韓国だけでなく日本でも人気になっています。ヒット作を下敷きにTVドラマを作れば、ある程度の面白さは担保されるということなのでしょうか。テレビ離れが叫ばれる中での、引き留め策のひとつなのかもしれません。

似てるものが全てパクリとも言い切れません。欧米圏含め全世界的にヒットし、シーズン2の配信も決定している「イカゲーム」。巨額の賞金を目指し、集められた人々がデスゲームに挑戦していく話です。このドラマでは、先ほどの話とは反対に、日本の「賭博黙示録カイジ」のパクリなのではないかという議論がネットを中心に巻き起こりました。こちらのマンガも借金を抱えた参加者が命を懸けたゲームをクリアし、賞金獲得を目指すというシナリオだからです。

イカゲームの監督は盗作を否定していますし、そもそもこの場合、「デスゲーム」という舞台自体、命を懸けてでも賞金を目指す=それくらい困窮しているという構図でないと成り立たないため、ある程度設定が似てしまうものだとは思います。

それよりも、「イカゲーム」が世界的に流行り、オリジナリティを発揮できたのは、話の大筋ではなく、そのディテールが特徴的だったからでしょう。例えば、だるまさんが転んだや、型抜きなど、韓国の子ども達に親しまれている昔遊びが、参加者の生死を分けるゲームとして登場しています。

サブスクや韓流などの海外勢力に押される日本のエンタメ界においても、「輸入」ばかりではなく、よりオリジナリティを出すことが求められるのではないでしょうか。

 

参考資料:

日本テレビ、「厨房のありす

Netflix、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌

 

参考記事:

朝日新聞デジタル、2023年12月30日配信、「韓国ドラマはなぜ強い 『私の解放日誌』脚本家が明かす台詞・作劇術

朝日新聞デジタル、1月21日配信、「『厨房のありす』自閉スペクトラム症の料理店主、化学で客に寄り添う