能登半島地震、圧死9割 「揺れが収まるまで動かない」は絶対に正しいのか

1月1日に発生した能登半島地震。1月12日午前9時の時点で215名の方々が亡くなり、いまだ安否不明者は38名います。今回の被害のほとんどが倒壊した家屋の下敷きになるなど、圧死によるものだとみられています。

連日、テレビや新聞ではいまだ余震が続く被災地域の現状や、避難所生活や物資不足などの課題が報道されています。新聞各社の紙面では、被災された方々の現状が日々、伝わってきます。気になるのは、「逃げ遅れた」という表現を含む記事を多く目にすることです。

学校の避難訓練では、地震が発生したら、まず頭を守り、揺れが収まるまで机の下などから動かないよう教えられます。ですが、もし揺れが収まらないうちに、自分がいる建物が倒壊してしまったらどうなるのでしょう。

もちろん、状況を見ずに慌てて行動してしまうことは危険です。ですが、「逃げ遅れ」の危険性から言えば、身動きが取れ、逃げ道が確保されているうちに移動することも、場合によっては大事なのではないかと、感じました。

東京都教育委員会が出している避難訓練の手引き資料には、揺れが収束するまでは動かないと明記されています。また、都庁が都民に配布している『東京防災』にも、机の下で体を丸める人のイラストが多く使われており、筆者を含め、揺れ出したらまずは机の下にもぐらなければならないと考えている人が少なくないでしょう。

しかし、一概に「地震」といっても、その場その場でとるべき行動は異なります。耐震性に優れる鉄筋コンクリート造りの家では、その中で落下物などから身を守ることが優先されるべきでしょうが、反対に古い木造建築などでは、倒壊の危険性があるため、違った対応をしなければならないでしょう。

今回の能登半島地震では、直接死*が阪神淡路大震災以降、3番目に多いと言われています。阪神淡路大震災も、今回の地震のように、倒壊家屋による圧死が多かったといいます。共通することは、「キラーパルス」と呼ばれる性質の地震だったということです。

地震は周期によって動きが変わり、小刻みな揺れを起こす周期1秒未満のものもあれば、高層ビルが大きく揺れるような2秒以上というものもあります。キラーパルス(killer pulse)、つまり「危険な波動」とは、周期が1秒から2秒程度で、古い木造建築に見られるような低層の建物では、倒壊の危険性が非常に高くなると考えられています。この現象は、2016年の熊本地震や去年2月に発生したトルコ・シリア地震でも生じたとみられ、いずれも多くの家屋の倒壊が報告されています。このように、一概に「揺れ」と言っても、それが及ぼす影響は、地震や建物の性質によって変わります。そのうえ、震度の大きさや揺れの性質は地震が発生するまで分かりません。また、高齢化が進む地方と人が密集する首都圏では暮らす家のタイプは異なるでしょう。

日本では、どの地域で、そして自分自身がどんな状況で地震に遭遇してもおかしくありません。そのため、一律にこうしろというのではなく、状況を見極め、その場面に適した対応を取ることができるよう、教育現場でも教えていくべきなのではないでしょうか。

 

*直接死…地震による建物の倒壊、火災、津波など震災を直接的な原因とする死亡のこと。

 

参考資料

東京都教育委員会、「避難訓練の手引

ウェザーニュース、「熊本地震から7年 建物に甚大な影響を及ぼすキラーパルスとは

 

参考記事

読売新聞オンライン、1月8日配信、「救えなかった 妻も子も 能登地震 がれきの下 助け求める音

読売新聞オンライン、1月8日配信、「能登地方で警報級の大雪のおそれ…きょうで発生1週間、死者128人・避難者2万8000人

産経ニュース、1月10日配信、「『直接死』過去3番目の災害に、原因は『キラーパルス』能登半島地震