どうなる2024年? 元日3紙を読み比べて

明けましておめでとうございます。読者の皆さんにとって2023年はどんな年だったでしょうか。筆者の個人的ベストニュースは言わずもがな「藤井聡太八冠誕生」です。それはさておき、元日の新聞はやはり各紙どこも力が入っており読み応え抜群です。普段紙面比較というと、筆者は将棋記事ばかりを比べているのですが、せっかくこんな良い材料があるのにもったいない!ということで、今回は元日の3紙(朝日、日経、読売)を1面から読み比べていきたいと思います。

ただ、漠然と読んでも比較にならないので、「全体のイメージ」「社説」「将棋記事」という3つの視点に絞って考えていきます。

 

<全体のイメージ>

・朝日

目につくのは「企画」の多さです。1面から3面に「はちがけ社会」、4、7面は「私のスイッチ 人生の決断」、11面(オピニオン面)は「解なき今を照らすために」、28面(くらし面)は「明日なに食べる?」、35面(文化面)は「天才観察」と、小見出しとインタビュー記事が散りばめられています。「次はなんだろう?」とめくりたくなる、読み飽きない紙面だと思いました。

・日経

最初に目を惹くのは1面の「解き放て」という斜めに入った大見出しです。こういう紙面遊びというか、レイアウトなどで工夫するのは紙を大事にする読売新聞のお家芸だと勝手に思っていたので少し意外でした。ただ、それ以外は「らしさ」全開と言った感じで、1、3、6、7面の「昭和99年ニッポン反転」、全部で8面(11、13、15、17、19、20、21、22面)にわたる特集「飛躍」、さらには31面の「経営者が占う2024」など経済視点の特集の多さはさすが日経です。読売が衆院選の予想立候補を特集にしている中、世界の選挙を記事にしたり、一見守備範囲外に思える離島の特集記事だったり、社会面では「名前」に注目したマッチングアプリの記事だったり、というところからも日経らしさをひしひしと感じます。

・読売

他の2紙と比べると企画感は弱いものの、調査報道を1面にぶつけてくるところに気合いが感じられ、個人的にですが「藤井聡太」の記事が1面から登場するのは何よりも嬉しいです。また、他の新聞にないのが「スポーツ」記事の厚みです。23面から29面がスポーツ面で、32、33面は地域面ながらスポーツ関連になっており、スポーツ・文化・エンターテイメントを新聞と並ぶ本業と考えている「総合メディアグループ」としての姿勢が見えました。

<社説>

・朝日

見出しは「暴力を許さぬ 関心と関与を」。論の基調は「紛争」で、それに伴った水や食料、薬といったものの支援不足や戦争の火ぶたが切り落とされると止めがたくなる現実、憎悪や不信という土壌があることが記されています。他人事では済まされない世界で起こる紛争に対して、自分も「関心と関与」を忘れないでいたいと思わされました。

・日経

見出しは「分断回避に対話の努力を続けよう」。論の基調は「対話」で、朝日と同じく紛争について触れられていますが、戦いが終わることだけでなく新たな戦火を広げないことを重視しています。また、安全保障にも外交にも経済にも対話が大切で、コロナが収束してきた今、対面交流の重要性も訴えていました。今年は暴力ではなく話し合いで解決したニュースが増えることを祈るばかりです。

・読売

見出しは「磁力と発信力を向上させたい」。論の基調は「平和、自由、人道」で、朝日、日経と同じく紛争についても触れられていますが、デジタルの有用性と危険性、日本の人口問題などかなり踏み込んでいる印象を受けました。その上で、今年創刊150周年を迎えることもあり、今一度読売新聞が公正な報道、そして責任ある言論で読者の信頼にこたえ、新聞社として平和に貢献する誓いが記されていました。筆者も4月から記者として新聞を作る側になることを考えれば、平和のために自分に何ができるのか考え直す必要があると、背筋が伸びました。

<将棋記事>

・朝日

謙虚な藤井聡太八冠のことを表す見出しは各社同じですが、朝日は「「将棋に正解なし」藤井八冠らしく」としていました。朝日らしい視点は、「誰が藤井独走状態を止めるか?」に注目している点だと思います。どうしても記録や結果の方がニュースにしやすいことから、藤井八冠以外の棋士には光があたりづらくなってしまいます。そんな中でも様々な棋士を取り上げる姿勢が見えた気がします。一将棋ファンとしてはどの社もこの姿勢を忘れないでほしいです。

・日経

見出しは「思っていた以上の結果」としていました。日経は報道各社に向けた記者会見の内容ではなく、「新春対談」としての独自の内容であるところが他の2社とは違うところです。短いながらも具体的な対局についての藤井八冠からの言及もあり、対局心理が知れることは将棋ファンにはたまりません。

・読売

他2社と違うのは1面と38面の2面構成であるところです。1面は「藤井竜王 みなぎる棋力」ですが、38面は「将棋「理解1割にも満たず」」で当人の謙虚な姿勢が見出しなのは変わらずです。読売らしい視点は「防衛」というワードを使っているところだと思います。防衛という言葉から分かるように、藤井竜王本人に焦点があたっています。八冠達成だけでなく、その後の八冠防衛に着目する点は必要なことですし、八冠達成のときから防衛の話をしていたのは読売だけなのでその点は素晴らしいと思います。ただ、朝日新聞のところでも述べましたが、将棋界全体を盛り上げていくには藤井八冠以外にも光を当てることが必要不可欠です。2024年は読売新聞でも藤井八冠以外の記事が多く読めることを期待したいと思います。

 

新聞比較する度に、当たり前ですが、各社はこんなにも違うのだなと改めて気づかされます。お正月のゆっくりできる時間だからこそ、新聞を開いて2024年がどんな1年になるのか考えてみてはいかがでしょうか。良いスタートが切れること間違いなしのはずです。

 

参考記事:

各紙1月1日付 朝刊関係面

*あまりに多すぎ煩雑になるため、このようにまとめさせていただく形を取りました。