江戸城天守閣の再建計画で議論が盛り上がっています。令和の時代のお城の姿はどうあるべきなのか考えました。
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―「江戸城を活用しないのはもったいない」
今年に入ってから、外国人観光客数は円安の影響もあり急増しています。政府観光局によれば、今年11月の訪日外国人数は244万人とコロナ禍前とほぼ同水準まで回復しました。2023年の累計では2000万人を超えるとしています。25年には大阪万博が開催されるなど今後も増加が見込まれています。
1657年の大火で焼失した江戸城天守閣を再建し観光資源として活用すべきではないかという意見が民間の間から出てきています。「NPO法人江戸城再建を目指す会」は、2005年に発足して以来、観光資源や東京のシンボルとして江戸城を再建すべきと訴え、署名活動や勉強会を続けてきました。
「江戸城を活用しないのはもったいない」。菅前首相は11月12日に報道番組の中でこのように発言しました。観光客の増加を念頭に置いた発言でしたが、今回の議論に火を付けることに。インターネット討論番組「ABEMA Prime」で取り上げられるなど、首都の新たな観光資源について活発に議論されています。
―賛成67% 一方で、否定的な意見も
ジオテクノロジーズ社が、今年9月に実施した調査によれば、天守閣の再建について、「賛成」「どちらかというと賛成」が合わせて67.4%と好意的な反応が目立ちました。これまでの議論にもあった東京のランドマークとして再建し、観光需要を創出すべきという意見に加えて、伝統文化の継承や日本文化に触れる場所とすべきとの意見もあったようです。
否定的な意見の中には、再建の費用や工程が未知数で税金が投入されることへの懸念があるようです。江戸城再建を目指す会は、試算として費用を350億円〜500億円としていますが、財源をどう捻出するのかなど具体的な議論には至っていません。税金を投入するのであれば、採算性が問われます。さらに、天守閣跡地は皇居内部であり宮内庁や関係省庁との調整が必要となり、再建には高いハードルがあります。
―今問われるお城の姿とは
11月25日から12月3日まで皇居内の乾通りが一般公開されていました。紅葉の時期に合わせたもので、多くの観光客が訪れていました。宮内庁のホームページによれば、9日間で計15万人の来場者が訪れたそうです。
観光スポットとしても非常に人気の高い皇居。その中にシンボルとしての天守閣が建築されるというのは夢のある話です。きっと、ますます多くの人が訪れ東京を満喫してくれるでしょう。東京出身者にとって嬉しい話です。
しかし、現代に合わせたものなのか、江戸時代のお城に忠実に似せていくのか、基本をきちんと定めておくべきでしょう。名古屋城の再建にあたっては、名古屋市がエレベーターを設置しない方針を明らかにし、車いすの方がこの方針に声をあげて物議を醸しました。再建を本格的に論ずる前に、伝統文化としてか、観光資源としてか、なんのための再建かある程度の方向付けが必要だと感じます。
<参考文献>
全国1万人調査、「江戸城天守の再建」に対する期待度が明らかに