4年ぶりに開催されているジャパンモビリティショー2023。「東京モーターショー」という名前なら馴染みのある方も多いかもしれません。今回から「モーター(自動車)」だけでなく、「モビリティ(動くもの)」へと展示の枠を広げました。電動キックボードや自動運転技術など、次世代モビリティの発展が目覚ましいことがここからも伺えます。展示は「Immersive Theater」「LIFE&Mobility」「EMERGENCY&Mobility」「PLAY&Mobility」「FOOD&Mobility」の5つに分かれており、さまざまな場面で活躍する最新技術を見ることができます。
◇レシピは要らない「転送食ケーキ」
技術が発展していけば、日常生活にごく当たり前にあるシーンも変わっていきます。身近な例でいうと、ファミレスで導入されている配膳ロボットがそうでしょう。今回のモビリティショーでは、もっと進化する食体験の現場を見ることができました。
Byte Bites社のブースでは、PCから転送されたデータからケーキが作れる3Dフードプリンターが展示されています。名付けて「転送食ケーキ」です。
代表の若杉亮介さんは3Dフードプリンターを大学院で研究していたと言います。今回展示していた技術も、もともとは宇宙空間での利用から派生したもので、地球から遠く離れた宇宙空間でも家族の手料理が食べられような「共食体験」を目指していたということです。
このフードプリンターで作る料理の材料は、主に2つ。生クリームとペースト状のジャガイモです。どのように「本物っぽさ」を追求するのかが一番難しかったと言います。どんな食材でも利用することは可能ですが、それではプリンターに備え付ける原材料が多くなってしまい、実用は現実的でなくなります。そこで、どんな食べ物も再現することのできる万能な食材を探した結果、選ばれたのが、先に述べた生クリームとジャガイモです。ここにチーズケーキならカスタードをプラスし、苺のショートケーキであれば苺のつぶつぶ感を出すためにチアシードを加えることで、本物の味を再現していきます。
◇これからの「食」
今回のモビリティショーでは「みんなで一緒に未来を考える場」がコンセプトとなっており、持続可能性を目指した取り組みが多く見受けられました。EV車は分かりやすい例ですが、「持続可能性」というテーマは「食」にも言えます。
飽食時代といわれる日本では、フードロスが問題です。解決へのアプローチとして、代替食品の市場規模は現在、拡大しています。大手食品メーカのカゴメは植物性の代替食品の取り組みとして大豆ミートを使った商品を展開しています。また、セブンイレブンは「みらいデリ」と称して、えんどう豆で作ったナゲットの販売などを始めています。
Byte Bitesもそのような会社のひとつです。同社が監修し、「NEO新宿アツシ」というレストランで廃棄予定の野菜を使った料理を販売しているそうです。廃棄される規格外の食品を利用できるのも、ペースト状の材料を扱う3Dフードプリンターならではの強みでしょう。このように、「食体験」を変えるだけでなく、一人ひとりの嗜好に合わせた食の提供や、食べ物を柔軟に再現する技術を生かし、食糧問題に取り組んでいます。
「食」は私たちの日常にとって、当たり前の存在ですが、その問題を身近に感じることはあまりありません。それでも最近では、企業の取り組みやそれによる商品をスーパーマーケットなどで目にすることが増え、代替食やプラントベースフードの理解が進んできたように思います。今回、そうした取り組みを支える技術を見たことで、美味しく社会課題に向き合うビジネスの最前線に触れることができました。
ジャパンモビリティショー2023の会期は11月5日(日)まで。会場の東京ビッグサイトまでぜひ足を運んでみてください。
参考記事:
朝日新聞デジタル、2023年10月25日配信、「『モビリティショー』期待一身 東京モーターショー改称・刷新、車以外の移動手段も発信 明日開幕」
参考資料:
NHKニュースWEB、「代替食品の商品取り入れる動き 大手コンビニ各社で広がる」
セブンイレブン、「みらいデリ セブン-イレブンのみらいに向けた取り組み」